みかん小説
本棚

"母の通帳に記された450円の謎" 第7話

さんが言っていたのよ……健は今とても事な期だから、私から連絡が来たら迷惑がかかってしまうって。だから絶対に自分から話をしてはいけないって……私はあなたの力になりたくてずっとしていたのよ……」

受話器の向こうで健が息をむ気配が伝わってきた。

「そんな……そんなこと、俺は1度も言っていないぞ! 母さん、俺は母さんがどうしてここ数ヶ1度も話をくれないのかって、ずっと配していたんだ! からは、母さんは1でのんびり暮らしたいからあまり干渉しないで欲しいって聞いていたんだ……だから俺、母さんのを尊して、会いたい気持ちを抑えていたんだぞ……!」 「え……?」

あまりの衝撃に私は言葉を失った。さんの言っていたことと、健っていたことがあまりにもい違っている。

「俺のスマホに母さんからの着信なんて1度もなかった! に聞いても、『お母さんは元気にやっている、自分から定期に様子を見にっているから丈夫だって』そう聞いてしきっていたんだ……母さん、母さん、ごめん……俺が、俺がもっとくに気づいていれば……!」

の声が激しい悔と共に震え始めた。

3ヶ、私が孤独に震え、あの子に迷惑をかけまいと声を殺していたあのは全て、さんのついた嘘によって作られた壁だったのだ。

広告

あの子は私を疎ましくってなどいなかった。それどころか私を配し、私からの連絡を待っていたのだ。

「健……あなたは私を邪魔だなんてっていなかったのね……話をしても良かったのね……!」

私は受話器を抱きしめるようにして、子供のように声をあげて泣いた。え切った廊で、私はようやく自分が決して捨てられたわけではないことをった。さんが築きげた報の壁が、今音をてて崩れっていくのをじた。

「母さん、すぐにく! 今すぐそっちに向かうから、もう何も配いらない! 俺が、俺が全部なんとかするから、待っていてくれ!」

の力い言葉が、私の凍りついたにようやく本当のを運んできてくれた。公衆話の受話器を置いた、私はしばらくそのに座り込んでいた。

真実はあまりに残酷で、けれどあまりに温かかった。さんの卑劣な嘘によって奪われた。けれど、その嘘が溶けた今、私と健を結ぶ絆は以よりもく、確かなものとしてそこにあった。

私は護師さんに支えられながら、ゆっくりと病へのを戻った。窓のではまだり続いていたけれど、私の胸のにはもう2度と消えることのないさな灯がともっていた。息子が来てくれることを伝えると、茂蔵さんはしたように自分のへと戻っていった。

広告

が病び込んできたのは、話を切ってから1も経たないうちだった。病院の薬剤師として勤務している最だったはずだが、彼はを脱ぎ捨て急いで駆けつけてくれたようだ。肩を激しくさせ、その顔はに青ざめている。

「母さん、丈夫か!?」

彼の声は震えていた。私はベッドのさくを縮め、無理に微笑みを作った。

「本当に来てくれたのね……お仕事丈夫だったの? 病院の仕事は邪の流で1分1秒を争う忙しさだって聞いていたから配していたのよ」 「仕事は同僚に任せてきたよ。それより、母さんが救急で運ばれたなんて、体何があったんだ」

私は点滴の管がつながった細い腕を布団のに隠そうとしたけれど、健の鋭い線からは逃げられなかった。彼は私のこけ落ちた頬や自然に浮きた鎖骨、そして何枚もね着をしたダウンジャケットの無残な姿を見て絶句した。

「母さん、その痩せ方は何だ……ちゃんとべていたのか? からは『母さんは元気にやっている、贅沢すぎるくらいだって』聞いていたのに……体どういうことなんだよ」 「え……べていたわよ。ただ最が細くなってしまって……それに、あなたからの仕送りも切に使わせてもらっていたわ。毎欠かさず450円も振り込んでくれて本当にありがとう。

あなたの優しさが私の唯の支えだったのよ」

私が謝の気持ちを込めてそう告げると、健きが止まった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: