"母の通帳に記された450円の謎" 第6話
医師の言葉に私は吉な予で胸が騒いだ。
「刻って……ただのちくらみじゃないんですか? もうですし、よくあることかと……」
私が言い訳するように答えると、医師は鏡の奥の鋭い目で私をまっすぐに見据えた。
「いいえ、簡単な話ではありません。検査の結果、あなたは度の栄養状態、いわゆる栄養失調に陥っています。血液のヘモグロビン値も異常にく、極度の貧血です。さらに骨密度を調べましたが、あなたの骨はスカスカの状態で、いつどこが折れてもおかしくない。これほどまでに衰しているのは、期にわたってまともな事をとっていない証拠です」
栄養失調――現代の本でそんな言葉を突きつけられるなんていもしなかった。
「これから1週は入院して、徹底な栄養管理と療養をいます。勝な退院は認められませんよ」 「1週も……先、そんなの無理です! 入院費なんて私払えません。それに、には切なぬかがあるんです! 3に1度はかき混ぜてあげないと腐ってしまう。お願いします、今すぐ帰らせてください……!」
私は点滴のつながったを震わせながら、必に医師に訴えた。1週の入院費がどれほど額になるか。450円の仕送りとわずかなで暮らしている私に、そんなを面できるはずがない。
「しず子さん、落ち着いてください。
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今のあなたにぬかを混ぜる体力なんてどこにあるんですか? まずは自分の命を1番に考えてください」
医師は静かに、しかし断固とした調で告げると、護師に指示をして部をてった。
「しず子さん、さっきの話本当なのか? 入院費も払えないって、体どういう活をしてたんだ? あんたの息子、薬剤師なんだろう? 病院で働いてて料もいいはずじゃねぇか」 「健は……健は仕事が忙しいの。迷惑をかけたくないのよ。さんも私のために頑張ってくれているだし……」 「頑張ってるだと!? 栄養失調でにかけるまで放っておくのが頑張ってるって言うのかよ! おかしいぜ、どう考えても……!」
茂さんの鳴り声が私のに痛いほど響いた。彼が言うことは理屈では分かっている。だが、私は信じたくなかった。健はもう私のことなどどうでも良くなってしまったのか。もしそれが事実なら、私のこれまでの数ヶは何だったというのか。
「しず子さん、いいから息子さんに連絡しろ。このままじゃあいつ本当にちまうぞ」
息子に迷惑はかけたくなかったが、茂蔵さんのいも無にできなかった。何よりも体もってしまった私は、いつも以に息子の声を聞いてしたかったのだ。
「分かったわ……健にかけてみる」
私の携帯は充が切れてしまっていたので、私は震えるで病院の公衆話を使うための銭を探した。
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茂さんに背を押されるようにして、私はふらつく取りで病をた。
やっとのことで廊の隅にあった公衆話にたどり着く。震える指で10円玉を数枚投入に入れる。「チャリン」というい音が静かな廊に響いた。受話器を握りしめ、健の番号をゆっくりとダイヤルした。
臓がからびしそうなほど激しく波打つ。呼びし音が2回、3回となり響く。また繋がらないのではないか。そう諦めかけた、突然音が止まった。
「はい、もしもし?」
受話器越しに聞こえてきたのは、違いなく私のする息子の声だった。
「あ、もしもし……私よ、お母さんよ。お仕事にごめん なさいね……」
私の声は自分でも驚くほど震えていた。
「母さん!? 母さんなのか!? 今の話、どこからかけてるんだ!?」
健の声は驚きと困惑に満ちていたけれど、さんが言っていたような激しいりや拒絶のは微もじられない。
「病院の公衆話からよ。実はさっき救急で運ばれてしまって、入院することになったの……健の邪魔をしたらダメだって分かっていたのに、どうしても怖くて、本当にごめんなさい……」 「病院!? 救急!? 母さん、体何を言っているんだ!? それに邪魔だなんて、誰がそんなことを言ったんだ!?」
健の声が急に鋭くなった。私は話ボックスのたい壁に寄りかかりながら、途切れ途切れに言葉をついだ。