"母の通帳に記された450円の謎" 第2話
や郵便局での座におを振り込むには数料がかかる。窓やのATMなら550円ほど取られることもあるはずだ。その550円にこの450円をしてみれば、ちょうど1000円になる。あの子、きっと額を違えたのよね。ゼロを1つ押し忘れたんだわ。きっと……。息子自から「仕送り」と言ってくれたのだ。分1000円ではなく1万円だったのだろう。
息子に連絡しようかとったが、やめた。仕送りしてもらっているで、額を違えていないかなんて確認の話をするなんて、図々しくようにえたのだ。それに、いうちに入があったか確認する話が来るかもしれない。そのに言えばいい。
だが、1経っても2経っても息子からの話はない。ならばとい、仕送りがあったとお礼の話をしようと話をかけると、応答したのは息子の妻のさんだった。彼女は私の「仕送り」という言葉を聞いた途端、
「ああ、入ありました。じゃあ健にも伝えておきますね」
の言で会話を終わらせた。私の次の言葉を待たずに通話を切られてしまい、途方に暮れる。
そういえば息子は毎仕送りをすると言ってくれたのだ。となれば、次に仕送りをするに額違いに気づくかもしれない。そうじゃなくても、次に話をかければ健につながるかもしれない。
広告
だが、2ヶ目も3ヶ目も、郵便局のATMから吐きされた通帳に刻まれていたのは、やはりあの450円という数字だった。
健に何度かけてもさんがる。額について聞いても「忙しい」と切られる。通帳を握りしめる指先が、寒さとは別の理由で刻みに震える。1度目はこの異常な額をあの子の精杯の優しさだと自分に言い聞かせた。忙しいのに、と。けれど、こうも同じ額が繰り返されると、胸の奥に溜まったがどろりとした澱のようにくのしかかってくる。
健、本当に丈夫なのだろうか。お母さんに言えないような変なことに巻き込まれているのではないか。病院の薬剤師として働いているとはいえ、あの子だって1のだ。過酷な労働でや体を壊してはいないだろうか。
私は急ぎでアパートに戻ると、え切った布団のに腰をろした。息を吐く度にく濁る部ので、元にあるさなスマートフォンをじっと見つめる。数、健が万がの連絡用にと持たせてくれたものだ。私は1ヶに嫁のさんがこの部を訪れたのことをいしていた。彼女は玄関先で私のスマホをひったくるようにに取ると、慣れた様子で画面を操作しながら、やかな声で告げたのだ。
「お母さん、いいですか? 健さんは今、邪やインフルエンザの流で病院の仕事が本当に忙しいんです。
広告
薬剤師として朝から晩まで薬の調剤に追われて息つく暇もないくらいなんですよ。そんなに、お母さんから何度も話がったら、健さんの集力が切れて仕事にミスがてしまいます。健さんのキャリアを傷つけたくないなら、自分から連絡するのは絶対に控えてくださいね。彼が切なら分かりますよね?」
それ以来、私は健の番号を押す勇気を失ってしまった。あの子の未来を壊したくない。仕事の邪魔をしたくない。そので、ただあの子からの連絡を待つ々を過ごしてきた。
けれど、もう3ヶも健の声を聞いていない。しだけ、言だけでもいいから無事を確認したいわ……。
すると、静まり返ったアパートの階段から釣いな音が響く。カツ、カツ、カツ。コンクリートに1段ずつを踏みしめるいヒールの音だ。それは1週に1度、息子の嫁であるさんがやってくる図だった。
「お母さん、入りますよ」
鍵をけるとすぐに扉が乱暴にけ放たれる。とのたい空気と共に、彼女がまとっているきついの匂いが狭い玄関に気に流れ込んできた。
「あら、さん、わざわざ様子を見に来てくれたのね。いつも悪いわね」
私は何にもねたダウンジャケットの裾をえ、ゆっくりと彼女を迎えた。彼女は玄関につなり、私の気枯れた姿を見てあからさまにで笑った。