"母の通帳に記された450円の謎" 第1話
もしもし、母さん。栄養失調で入院したって、ちゃんと事してなかったのか?仕送りも毎欠かさずしているのに……。
話から聞こえてくるのは、私の男・健の声だ。
「え、いつもありがとうね。でも、その450円だと数料の方がくつくだろうし、私のことは気にしなくて丈夫よ」
450円、数料。母さん、体何を言っているんだ?俺は毎5万円振り込んでたんだけど。――え、この、息子のから衝撃の事実がかされるとはってもみなかった。
私はしず子。今で80歳になる。1に最の夫をくしてからは、築40を超える古い造アパートで1暮らしを続けてきた。結婚してからずっと専業主婦として庭を守ってきた私にとって、今の収入源は自分の国民と夫が残してくれたわずかな遺族だけだ。々の活はお世辞にも楽とは言えなかった。
窓のではが散らつき始め、隙が容赦なくい壁を抜けて部のに忍び込んでくる。あまりの寒さに、私は内でもあのダウンジャケットを着込み、使い古して膝がくなったズボンを2枚ねにして履いていた。それでも体は芯からえ切り、指先は覚がなくなるほどかじかんでいる。気代を節約するため、はよほどのことがない限りつけないのが私の活の鉄則だった。
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朝、台所の錆びついた蛇をひねると、凍りつくようなが赤く腫れがった私のを容赦なく突き刺す。洗剤を泡てる気力もなく、ただたいで昨夜の粗末な器を洗うだけだ。あかぎれが何箇所も切れて血が滲み、鋭い痛みがったが、絆創膏を買うおさえ惜しい今の私には、じっと耐える以の選択肢はなかった。
「ああ、今も本当に寒いけれど、郵便局へかなくては……」
私は震えるで使い古した杖を握り、い腰をげた。今は待ちに待った末。息子からの仕送りが入される切ななのだ。
「母さん、これからは毎仕送りをすっから、活のしにしてよ」
葬儀の、あの子が言ってくれたその言葉を、私は今までお守りのように胸に抱いてきてきた。自分のだけでは、このボロアパートの賃と費を払うだけで精杯だ。健の助けがあれば、あかぎれが痛むこのにしはいい塗り薬を買ってあげられるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら、私は駅の郵便局へと向かった。
郵便局のはが効いていてひどく静かだった。私は震えるで鞄から1冊の通帳を取りした。表面が擦れて文字が消えかかっている。私の唯の財産だ。
ATMのにち、吸い込みに通帳を差し入れる。カタカタと音を刻む乾いた音が静かな空に響く。
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その音が止まり、元に戻ってきた通帳を、私は祈るような気持ちでいた。
(健、ありがとう。切させてもらうわね……)
のでつぶやきながら最のに目を落としたけれど、そこに刻まれていた数字を目にした瞬、私の指先は凍りついた。
入:450円。
瞬、のが真っになった。4万5000円の見違いではないかとい、私は鏡をして何度も目をこすったけれど、何度見直してもそこにあるのは「450」というあまりにも細い3つの数字だけだった。
「どういうことかしら……? 何かの違いじゃないかしら……?」
臓が嫌な音をてて鐘を打ち始めた。今の代、450円で何が買えるだろう?スーパーで見切り品のパンをいくつか買えばそれで終わってしまうような額だ。病院の薬剤師として忙しく働き、それなりの収入があるはずの健が母親に送る額としてはあまりに自然だ。瞬だけ胸の奥にたいがよぎった。その子にとって私はもうその程度の価値しかないになってしまったのだろうか。けれど、私はすぐにその考えを激しく首を振って打ち消した。
「いいえ、そんなはずはないわ。健はあんなに優しい子なんだもの。何かい理由があるに違いないわ」
私は通帳を見つめたまま、必になってこの450円という数字の裏にある正解を探した。
そして、1つの解釈にたどり着いた。
「そうか、数料だわ……」
私は点がいったようにさく頷いた。