"20人の宴会、妻は2つの鞄を用意していた" 第5話
証拠はないと言った母
母が再びマンションへ来たのは、警察が来てから3だった。
子錠の権限を止めていたため、母は建物に入れず、エントランスから私の携帯へ話をかけてきた。モニターには母だけでなく、兄の純平も映っている。
「話しいに来た。母さんをいつまでにたせるつもりだ」
兄は番、そう言った。
美紀に確認すると、逃げずに話すと言った。ただし自宅には入れず、管理がち会える共用応接を使うこと、彩にも同席してもらうことを条件にした。
狭い応接で、母は私の顔を見ようともしなかった。兄は美紀の向かいに座り、持参した封筒をテーブルに置いた。
「母さんの荷物を返してもらう。それから警察への説を訂正してくれ。族ののことを、事件みたいに話す必はないだろう」
「訂正することはありません」
美紀は声を荒らげなかった。
母が子の肘掛けを叩く。
「私がいなければ、このは回らなかったのよ。健は毎のように張でしょう。事も掃除も孫の教育も、誰かがやらなきゃいけないじゃない」
美紀はテーブルので両を組んだ。治療用の膏を塗った指には、い包帯が巻かれている。
「を回していたのは私です。お義母さんが増やした事まで、私と優奈がしていました」
「証拠は?」
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母は待っていたように問い返した。自分がでは命令の言葉を選び、私が帰宅するには穏やかな母親へ戻っていたことに自信があるのだろう。
「私は優奈に伝いを教えただけよ。美紀さんのの傷だって、私がつけた証拠はないでしょう。宴会も、皆さんが料理を持ち寄った普通の集まりだったわ」
「20も呼んでおいて普通なわけがない」
私が言うと、兄は骨に顔をしかめた。
「健、おまで嫁の言い分だけ信じるのか。母さんは64歳だぞ。相模原で1にして、何かあったらどうする」
「兄さんので暮らしてもらえばいい」
純平はを閉じた。
兄は母を守りたいのではなく、私のへ戻して自分の負担を避けたいだけだった。そのことは、応接に持ってきた封筒にも表れていた。に入っていたのは母の類覧だけで、今のまいや活をどうするかという提案は1枚もない。
「美紀が訂正しなければ、親戚にも会社にも話すぞ。嫁に追いされた母親を放置しているってな」
兄が脅すように言うと、美紀はわずかに息を吐いた。以の彼女なら私の顔を見ただろう。しかし今は、私ではなく管理と彩が同席していることを確かめ、正面から兄を見返した。
「どうぞ。ただし、私たちも事実を説します」
母はすぐに話題を変え、美紀を指さした。
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「このはから私を追いすつもりだったのよ。友達に荷物を預けて、録音までして。そんなもの、都のいいところだけ切り取ったに決まってる」
その言葉を聞いた美紀は、隣に座る彩とく目をわせた。
彩が鞄から古いスマートフォンを取りし、美紀がさな黒いUSBメモリをテーブルに置く。さらにのファイルをくと、撮の記された写真覧が現れた。
私は初めて、その量を正確にった。
録音データは11件。写真は37枚。美紀のの傷、捨てられた料理、夜まで積まれた洗濯物、踏み台ので皿を洗う優奈。どれも作成と元データが残されていた。
覧の最には、宴会当の客の数と到着刻まで記録されている。をき連ねた記ではない。から読み返した第者にも、何が、いつ、どこで起きたか分かるように理された記録だった。
美紀がここまで静に残していたのは、母への復讐をしない。いつか自分の言葉をまた否定された、優奈を連れて全にれるためだった。
母は写真を見ようとせず、腕を組んだ。
「写真なんて、いくらでも演できるでしょう。録音だって、私の声だと証できるの?」
美紀はスマートフォンをに取り、再画面をいた。指先は静かで、もう宴会ののようには震えていない。
「お義母さん。録音11件、写真37枚」
母がようやく美紀を見る。
「11か分、全部残っています」