"身重の愛人を抱き起こした私" 第11話
先は、私の顔をじっと見つめた、フッと元を緩めた。
「学の頃から芯のい輩だとはっていましたが……頼もしいですね。分かりました。全力でバックアップします。康平氏の逃げは、法律の力で本残らず塞ぎましょう」
事務所をると、がを赤く染め始めていた。 私のスマートフォンが、バッグので激しく震えた。 表示された名は『葵』だった。
◇
「……助けてください」
受話器の向こうから聞こえてきたのは、過呼吸になりそうなほど乱れた、葵の泣き声だった。
「お義母さんが……康平さんのお母さんが、急に私のアパートに来て……っ!」
激しい罵声の反響と、物がに叩きつけられる鈍い音が、スピーカー越しに漏れ聞こえてきた。
「今、どこにいるの」
「部のです……! チェーンをかけてるんですけど、ドアを狂ったみたいに叩いてて……! 所のも集まってきちゃって……どうしたらいいか……っ!」
「警察を呼びなさい」
「呼べないです! そんなことしたら、康平さんが本当にって……私、本当に捨てられちゃう……!」
まだそんなに縋り付いているのかと、呆れ果てるいだった。 だが、義母のこの異常なの引きが何であるかは、容易に像がついた。 おそらく、康平の借の督促が、自宅の固定話か郵便物を通じて、義母のに入ったのだ。
「葵さん、落ち着いて私の言うことを聞きなさい。
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スマートフォンの録音能をオンにしなさい」
「え……?」
「今すぐ録音アプリを起して、ドアの向こうの声をすべて記録するのよ。ドアは絶対にけてはダメ。いいわね、絶対にけちゃダメよ。私が今からそこへ向かうから、それまで言も喋らずに、ただ録音を回し続けなさい」
話を切り、私は通りへてタクシーを拾った。 葵から送られてきた所は、川沿いに建つ築以の造アパートだった。
タクシーがアパートのに滑り込むと、階の通からすでに切り声が響き渡っていた。
「けなさいよ! この棒猫! てきて説しなさい!」
階段を駆けがると、階の暗い通に、鬼のような形相の義母・敏子が仁王ちしていた。 には派な柄物のハンドバッグを握りしめ、粗末なスチール製のドアをドンドンと力任せに叩いている。隣の部のドアがわずかにき、たちが怯えたように覗き見ていた。
「お義母さん」
私が背から静かに声をかけると、義母は弾かれたように振り返った。 その顔はりと恐怖で醜く歪み、化粧が汗で崩れてドロドロになっていた。
「ゆ、由さん……!? あなた、なんでここに……」
「お義母さんこそ、こんなところで何をしているんですか。所迷惑です。警察を呼ばれますよ」
「警察ですって!? 被害者はこっちよ! 佐藤なのよ!」
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義母は唾をばしながら、私の腕を掴もうとしてきた。私は歩退り、ややかにそのをかわした。
「さっきね、に気の悪い男たちから話があったのよ! 康平がを返さない、このままじゃ会社に乗り込むぞって! 何のことか康平を問い詰めたら、全部この女のせいだって状したわ!」
義母のからびしたのは、予通りの、そしてあまりにも見苦しい責任転嫁だった。
「この女が康平をたぶらかして、ブランド物をねだり、価なマンションをねだり、康平に無理やり借を背負わせたのよ! 跡取りだなんて嘘つきの詐欺師よ! 康平の世を邪魔して、佐藤を破滅させる気なんだわ!」
昨夜、あれほど葵の腹を狂ったようにさすり、「待ちに待った初孫」「佐藤の恩」と持ちげていた女が、のリスクが自分に及ぶとった瞬、これである。
「けなさい! 今すぐその腹の子を堕ろしなさいよ! どこの馬の骨ともれない汚いガキを、佐藤の子どもだなんて偽って、おをたかる気でしょう! 円もさないわよ! さっさと田舎へ消え失せなさい!」
ドアの向こうから、葵の押し殺した嗚咽が聞こえていた。
「お義母さん、もうやめなさい」
私は義母の肩をく掴み、ドアから引きした。
「恥ずかしいのはあなたです。昨夜、葵さんをに招き入れて、私を追いそうと勝ち誇っていたのは誰ですか。
自分の息子の借を、のせいにして鳴り散らすなんて、佐藤の世体とやらはどこへったのですか」