"身重の愛人を抱き起こした私" 第6話
私はくをげた。 指先が微かに震えていたが、それは恐怖からではなかった。 康平という男が張り巡らせている、底れない欺瞞の輪郭が、暗のからおぼろげに浮かびがってきたことへの戦慄だった。
「葵さんの容態は、本当に落ち着いているのですね」
「ええ。点滴が効いて、血も治まりつつあります。今夜は絶対静ですが、の午には検査をして、問題がなければ退院の判断ができるでしょう」
「分かりました。入院費の精算は、の朝、私が責任を持っています」
診察をると、廊の蛍灯が々と元を照らしていた。 私は病のドアの窓から、をそっと覗き込んだ。 暗い部のベッドで、葵は点滴の管を腕に繋がれたまま、横を向いてさく丸まっていた。 その顔には、先ほどまでの気な面はなく、ただ怯えた子どものような脆さが張り付いていた。
あの女も、康平に騙されている。 だが、同してを取りう気など微も起きなかった。 私のをで踏みにじり、「子どもを産めない役たず」と嘲笑った事実は消えない。 ただ、真実をるための鍵が、あの女の周辺にあることだけは確かだった。
私はコートの襟をて、夜の病院をにした。
◇
夜半。 え切った宅を歩き、自宅の玄関ドアを静かにけた。
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のは、気なほど静まり返っていた。 靴脱ぎには、康平の革靴が無造作に脱ぎ捨てられている。 リビングに入ると、をつくアルコールの臭いが漂っていた。テーブルのには、み散らかされたビールの空き缶が本と、乾ききったポテトチップスの袋が放置されている。
私が丹精込めて作った目鯛の煮付けは、ラップもかけられないまま、黒くえ固まっていた。 妻がを連れて病院へり、の境を彷徨っているかもしれない夜に、この男はで酒を煽り、くつろいでいたのだ。
階から、響きのような康平のいびきが聞こえてくる。 義母の部がある階のの襖は、ぴたりと閉ざされていた。
私は息を殺し、靴履きのでリビングの奥――康平が使っているさな斎コーナーへと向かった。
普段の康平は、自分のテリトリーに私が触れることを極端に嫌った。 『おみたいな能無しが触ると類の並びが狂う』 そう言って、斎の机やキャビネットの掃除すら私にさせなかった。 だが、その傲さゆえに、この男の隠し事は常に浅い。 自分が見しているが、まさか自分の領域に踏み込んでくるとは、にもっていないからだ。
私はスマートフォンのライトを最に設定し、机の引きしにをかけた。
段目。
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文具と、使い古された名刺入れ。 段目。会社の業務報と、ゴルフのスコアカード。 そして、番のい引きし。
引きしの奥に、具のついたのファイルが押し込まれていた。 私は音をてないよう慎にそれを引きし、のに正座してページをめくった。
最初にてきたのは、見慣れない融会社の封筒だった。 赤い文字で『至急封』と印字されている。 封をけ、の細に目を落とした瞬、私の臓が激しくねた。
『ご融資残および次回ご返済期のおらせ』 借入残――百万円。 利は法定限にい数字が並んでいる。
さらに奥から、別の封筒が何通もてきた。 消費者融社からの督促状。 ネット証券会社からの制ロスカット通。 FX取引の追証未納に関する警告。
すべてを計算するまでもなく、異常な数字だった。 総額で、千百万円を超えている。
「……なんなの、これ……」
声が漏れそうになり、私はとっさに元をで押さえた。
康平は商社の営業課で、収は百万円くあったはずだ。贅沢さえしなければ、借に追われるような活ではない。 だが類の付を見る限り、ここ半のに、異常なペースで借入が膨らんでいた。 の無登録業者を使ったハイレバレッジ取引にをし、暴落でじた追証を埋めるために、まがいの業者からを借りて注ぎ込んでいたのだ。
そして、ファイルの最部からてきた枚の類が、私の息の根を止めかけた。