"身重の愛人を抱き起こした私" 第4話
内が再び、苦しい沈黙に包まれる。 私はスマートフォンをバッグにしまった。 横を見ると、葵は両でお腹をく押さえたまま、固く目を閉じていた。 その睫毛の隙から、筋の涙が頬を伝い、シートに吸い込まれていくのを、私はただ黙って見つめていた。
◇
藤総病院の夜救急来は、夜の気に包まれ、独特の消毒液の匂いがち込めていた。
自ドアをくぐると、受付の護師が素く子を持って駆け寄ってきた。 葵はそのにへたり込み、護師たちに抱えられるようにして処置へと運ばれていった。
「お連れ様ですか? こちらの問診票にご記入をお願いします。保険証はお持ちですか」
事務員からバインダーとボールペンを渡され、私は待のいプラスチックの子に腰をろした。
葵のバッグから見つけした健康保険証の報をき写していく。 葵、歳。 職業の欄は空欄にした。所は、がからで分ほどれた町のワンルームマンションだった。
診察代の預かりとして、私は自分の財布から万円の現をし、会計窓に預けた。 康平は円もす気がない。義母も同じだ。 なぜ、夫のの急病に、捨てられようとしている私がを払わなければならないのか。 客観に見れば、愚鈍極まりないお好しのだろう。
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だが、私のには、単なる善とは違う、徹な計算があった。
あので起きた異常な景。 康平の底れない無関。 そして、葵という女が抱え込んでいる違の正体を、この目で確かめなければならないという、い衝だった。
処置のい扉の向こうから、折、医師の指示をす声や、械の子音がく漏れ聞こえてくる。 壁の計の針が、夜零を回った。
どれくらいのが経っただろうか。 カチリとドアがき、を着た男性医師がてきた。代半ばほどだろうか、し髪の混じった髪に、疲労のを隠せない鋭い差しをしていた。胸元の名札には『産婦科部 松永』とある。
「葵さんの、ご族の方ですか」
松永医師が、待を見回して声をかけた。 子からちがったのは、私だけだった。
「付き添いの者です。彼女の容態はどうでしょうか」
医師は私の顔をじっと見つめ、元のカルテに目を落とした。
「急性腹症を疑いましたが、超音波で確認したところ、切迫流産の兆候が見られます。絨毛膜血腫が広がっており、極度の精神ストレス、あるいは過度の肉体負荷が引きになったと考えられます。幸い、拍は確認できました。止血剤と子宮収縮抑制剤の点滴を始し、現は病で眠っています。今夜はこのまま入院して絶対静です」
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「……そうですか。命に別状がなくて、良かったです」
私がから堵の息を吐くと、松永医師は眉をわずかにかした。 その目は、単なる患者の付き添いを見る目ではなく、何かを値踏みし、測りかねているようなさを帯びていた。
「奥さん」
医師が、く落ち着いた声で言った。
「し、診察でお話しできますか。ご本には聞かせられない確認事項があります」
「私に、ですか?」
「ええ。あなたにです」
医師の表のさに、私の胸の奥でさな警鐘が鳴った。 ただの病状説ではない。 私は頷き、医師のに続いて、無質な診察へとを踏み入れた。
内には、超音波のモニターや診察台が並び、独特の械音がく唸っていた。 松永医師はデスクのの回転子にく腰掛け、私に対面の丸子を勧めた。 私が座ると、医師はカルテの表に挟まれた枚の類――先ほど私が記入した問診票を指先でトントンと叩いた。
「問診票の緊急連絡先、あなたの名がかれていましたね。『佐藤由』さん」
「はい」
「そして、先ほど彼女の保険証を確認した事務から報告を受けました。彼女の同伴者として来られたあなたの名字と、彼女が妊娠初期の定期検診の類に記載していた『父親の氏名』が致している」
松永医師の鋭い線が、私の瞳の芯を捉えた。
「患者の葵さんは、お腹の子の父親を『佐藤康平』と申告しています。
……佐藤由さん。