"息子が私の家を売る夜" 第23話
来に決済をい、売却益の全額は、子さんが契約された武蔵野のシニア向けサービス付き齢者宅の入居、および終にわたる介護信託座へと直接振り込まれます」
「シニア宅……!?」
智美さんが鳴のような声をげました。
「私たちが……私たちがこんなに苦しんでいるのに、でそんな級老ホームに入るっていうの!? あんまりじゃない! 自分さえ良ければ、息子夫婦が破産しても構わないっていうの!?」
智美さんはついに、取り繕うことすらやめ、剥きしの欲望のままに喚き散らしました。
「ええ、構いませんよ」
私は、眉つかさずに答えました。
「あなたたちの借は、あなたたちが贅沢をし、分相応な見栄を張って作ったものです。の丈にわないローンを組み、収入が減っても活レベルを落とさず、困れば老いた母親の財布をあてにする。その勝なツケを、なぜ私のの最のを売り払ってまで払わなければならないのですか?」
「お、お義母さん……っ!」
「介。ローンの支払いが苦しいなら、このを売りなさい」
私は元の息子に、徹な現実を突きつけました。
「の丈にった賃貸に引っ越し、活を切り詰め、自分の力で働きなさい。それが、の男が背負うべき責任というものです」
介は畳に顔を押し当てたまま、ヒクヒクとけない嗚咽を漏らすことしかできませんでした。
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母親の慈は、もう滴も残っていませんでした。与えられ続けた甘い果実は、自らので腐らせてしまったのです。
そのでした。
「……おばあちゃん」
リビングの引き戸が、静かにきました。 そこにっていたのは、制姿の孫娘・由紀でした。
いつからそこにっていたのか、彼女のにはたい通学カバンが握りしめられ、その頬には静かな涙が伝っていました。
「由紀……」
智美さんがハッと息を呑み、慌てて取り繕うように髪を直そうとしました。 しかし、由紀の線は、無様ににへたり込む母親にも、畳にすがりついて泣く父親にも向けられませんでした。まっすぐに、私だけを見つめていました。
「由紀ちゃん、お帰りなさい」
私が穏やかな声で呼びかけると、由紀は袋の音を忍ばせるようにして、私の方へと歩み寄ってきました。そして、私の膝のにちょこんと正座をしました。
「おばあちゃん……全部、聞こえてた」
由紀の声は震えていましたが、その瞳の奥には、濁りのない清らかなが宿っていました。
「お父さんも、お母さんも……ずっと、おばあちゃんのおのことばかり話してた。私の学のことも……おばあちゃんのを売ったおでくんだって。私、それがずっと苦しくて……恥ずかしくてたまらなかったの」
由紀は制のスカートをぎゅっと握りしめました。
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「私ね、特待の推薦、受けることにしたよ。学費が全額免除になる国の教育学部。予備の先にも相談して、公認の推薦枠をもらえることになったの。だから……おばあちゃんのおなんて、円もいらない。私、自分でおを稼いで、自分の力で学にくから」
「由紀! 何を馬鹿なこと言ってるの!」
智美さんが切り声をげました。
「国なんて倍率がいのに受かるわけないでしょう! 私の薬学部にって、堅い資格を取るって決めたじゃない!」
「それはお母さんの見栄でしょ!」
由紀は初めて、母親に向かって鋭く叫びました。
「私はずっと、学の先になりたかった! おじいちゃんが昔、国語の先をしていたみたいに、子供たちに本を読む楽しさを教えるになりたかったの! お母さんが勝に決めたレールので、おばあちゃんの血を吸いながらきていくなんて、絶対に嫌!」
由紀の真っ直ぐな言葉が、リビングの淀んだ空気を気に吹きばしていくようでした。
智美さんは言葉を失い、をパクパクとかしたまま、自分の娘を見つめることしかできませんでした。
私は、膝のにある由紀のさなを、そっと両で包み込みました。 温かく、しだけ汗ばんだ、未来を掴もうとする若い。
「成瀬先」
私が声をかけると、成瀬先は温かな差しで由紀を見つめ、最の通の類を差ししました。