"昭和39年、姉の「元気です」に隠された嘘" 第5話
《元気です》
《元気です。こちらは暑くなりました》
《元気です。仕事にも慣れました》
文字の形は確かに姉のもの。
でも。
そのとのに。
何かもっときなものが。
隠されているようにえた。
子は翌朝。
初めて母へ。
消印のことを話した。
子に会ったことも。
姉が仲のを代していることも。
全部。
節子は驚いた。
何度も葉を裏返した。
「子が……みんなのを?」
「うん」
「じゃあ、これもその帰りにしてたんだね」
「たぶん」
しばらくして。
子が聞いた。
「母ちゃん。姉ちゃん、本当は元気じゃないんじゃない?」
節子はすぐに否定しなかった。
「そうかもしれないね」
初めて。
そう言った。
そのから。
族は。
《元気です》
という言葉を。
額面通りには。
受け取れなくなった。
方その頃、子は京ので、毎朝6に起きていた。寮の洗面所には同じに何もの女が集まり、たいで顔を洗い、制へ着替え、堂で噌汁と麦の混じった飯を急いでべる。始業の鐘に遅れないように列を作ってへ向かう頃には、子も青森から来たばかりの女ではなく、順を覚えたの員になっていた。
仕事はさな部品の組みてだった。部品を決められた位置へ置き、具で固定し、次へ流す。単純に見えるが、定の速さで何も続けると肩と指先が痛み、最初の1かは夜になるとが震えることもあった。
広告
初に失敗した、の班からく叱られた。
「止めるならく言いなさい! が遅れたらろ全部止まるんだから!」
子は「すみません」とをげた。
そのの夜。
へをこうとした。
《母ちゃんへ。今、仕事で失敗しました》
そこまでき。
破った。
次のには。
《今はし疲れました》
といた。
それも破った。
最に。
《元気です。配しないでください》
だけをき。
葉へ写した。
自分でも議だった。
のなら。
どんな気持ちでも。
言葉にできる。
子が泣けば。
「寂しいってけばいいよ」
と言える。
ミツが仕事を辞めたいと言えば。
「辞めたいなら、それもけばいい」
と話せる。
でも。
自分の母へ向かうと。
何もけなくなる。
京へ来る。
節子は何度も言っていた。
「無理だったら帰ってきてもいいんだよ」
それが。
子には。
番けなくなる原因だった。
《仕事がつらい》
とけば。
母は迎えに来るかもしれない。
《毎晩泣いている》
とけば。
青森で眠れなくなるかもしれない。
《帰りたい》
とけば。
本当に帰ることになる。
には。
体のい父がいる。
には子と弟たち。
子の料からへ送るも。
なくなかった。
「京で働く」
と言ったのは。
自分だ。
族に押しされたわけではない。
町に残れば。
働ける所がなかった。
いつかにしでもを入れたいと。
広告
自分で決めた。
だからこそ。
音をくのが。
負けのようにえた。
それに。
子にはもうつ。
族へ言えないことがあった。
初めての料をもらった。
子はっていたよりない取りを見て驚いた。
寮費。
費。
作業着代。
いくつかの控除。
それでもへ送した。
節子からは。
《そんなに送らなくていい。自分で使いなさい》
と返事が来た。
子は。
そのを読んで。
泣いた。
「送らなくていい」
と言われたことが。
嬉しいのではなく。
自分が。
まだ子どもとして。
配されているようで。
悔しかった。
く。
役につになりたい。
く。
母に配される側から。
配する側へきたい。
そんないが。
子を。
さらにから。
ざけた。
休。
同じの仲が集まる所へくようになったのは。
偶然だった。
最初は。
子が。
「母ちゃんにきたいけど、何けばいいか分かんない」
と言ったのが始まりだった。
子はをし。
「しゃべってみて」
と言った。
そのうち。
「ちゃんがいてくれる」
という話が。
別の寮にも広がった。
。
荒川。
墨田。
板。
休みのたび。
子はや都を乗り継いで。
仲を訪ねた。
話を聞き。
便箋へいた。
誰かのへ。
通。
また通。
子は。
誰かの代わりに。
何度も。
「寂しい」
といた。
何度も。
「帰りたい」
といた。
何度も。
「母ちゃんに会いたい」
といた。
でも。
自分のへ送る葉だけは。
最まで。
だった。
昭403。