"昭和39年、姉の「元気です」に隠された嘘" 第4話
逃げ回っていたわけでもない。
しかし。
それなら。
もっと分からない。
子は。
の族には。
便箋を何枚も使って。
をいている。
なのに。
自分のへ送るのは。
《元気です》
そのだけ。
子は子を見た。
「どうして姉ちゃん、自分のには何もかないの?」
子の笑顔が。
消えた。
そして。
しい沈黙のあと。
こう言った。
「子ちゃん。ちゃんがに何ていてるか、私、今初めてった」
「どういうこと?」
「私たちにはね、ちゃん、へはちゃんとをいてるって言ってたよ」
子の指先がたくなった。
「……ちゃんと?」
「うん。だから私たちも、ちゃんは族に何でも話せるんだってってた」
子は。
もう度。
姉の字でかれた子のを見た。
そして初めて。
自分たち族だけが。
子の京での暮らしを。
何もらされていないのだと。
気づいた。
子は子をのへ招き、さな鉢のそばへ座らせた。京から帰ったばかりの荷物はまだ部の隅に積まれ、段ボールのには寮で使っていたらしい琺瑯の洗面器が置かれている。子は姉のことをく聞きたかったが、子がどこから話せばよいのか迷っている様子だったため、黙って待った。
「私ね、をくのが苦だったの」
子はそう切りした。
学代から作文が嫌いで、漢字にも自信がなかった。
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京へてから最初の頃は両親へ葉を送っていたものの、何をいても幼稚に見える気がして、次第にが止まったという。
「そしたらちゃんが言ったの。“きたいことをで言って。私が文章にするから”って」
子は休みのに子の寮へ来た。
「今の昼ご飯は何だった?」
「誰と番仲良くなった?」
「母ちゃんに本当は何を言いたい?」
つずつ聞く。
子が「仕事がつらい」と言えば、それをそのままくのではなく、《まだ慣れないこともいですが、しずつ覚えています》と族が配しすぎない言葉へ直した。
「帰りたいって言ったもあった」
子は鉢を見ながら続けた。
「ちゃん、“帰りたいなら帰ってもいいとう。でもには、本当に今すぐ迎えに来てほしいのか、それとも寂しいだけなのか、自分で決めてからこう”って言った」
子は驚いた。
では喧嘩っく、母へも答えばかりしていた姉が、京ではそんなことを言っている。
「それで子さんは帰ってきたの?」
「うん。でもちゃんに言われたからじゃないよ。体を壊して、医者からしばらく休めって言われたの。それで回へ戻ることにした」
子はし寂しそうに笑った。
「京へ戻るかはまだ分からない。でも、帰ったら負けだってってたに、ちゃんが“体壊してまで残る方がおかしい”って言ってくれた」
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子は膝のでを握った。
「姉ちゃん、自分は?」
「何が?」
「自分がつらいは、誰に話してたの?」
子は答えなかった。
代わりに、別の箱から数枚の便箋をした。
ミツ。
カヨ。
トシ。
それぞれ違う娘の名が差としてかれている。
でも文字は全部、子だった。
枚には、《今は夜勤がくてし眠いけど、ご飯はべています》とある。
別のには、《同じ部の子と喧嘩しました。でも昨仲直りしました》といてある。
さらに別の便箋には、《母ちゃんの煮物がべたいです》という文まであった。
「みんな、こんなことけるのに」
子は呟いた。
「なんで姉ちゃんだけけないんだろう」
子はしばらく考えた。
「ちゃん、の話になると急に話さなくなることあったよ」
「が嫌いなの?」
「逆だとう」
「逆?」
「事すぎるんじゃないかな」
子にはが分からなかった。
子は、ある晩の来事を話した。
の。
子が子の寮へ泊まりに来ただった。
夜。
皆が寝たあと。
子が布団ので泣いていた。
声を押し殺していたため最初は気づかなかったが、子が「どうしたの」と聞くと、子は慌てて顔を隠した。
「から来た?」
そう尋ねても。
子は首を横に振った。
「帰りたい?」
それにも答えなかった。
最に。
「母ちゃんに会いたい?」
と聞くと。
子は。
声をさず。
何度も頷いたという。
子は胸の奥が痛くなった。
その夜。
へ帰り。
押し入れから子の葉を全部取りした。