"昭和39年、姉の「元気です」に隠された嘘" 第1話
昭393、青森県のさな町にはまだ脇に黒ずんだが残っていた。田畑はを待つ湿ったのを見せていたが、朝晩のはたく、駅のホームにつ々の吐く息はかった。そのの駅には普段とは比べものにならないほどくの族が集まり、学を卒業したばかりの女を京や神奈川へ送りそうとしていた。
佐々子も、そののだった。15歳になったばかりで、紺の制には母・節子が縫い付けた真しいい襟カバーがついている。荷物は茶い柳李がつだけで、には着替え、裁縫具、族写真、母が包んだ梅干しと乾いた煎餅、それから妹の子がこっそり入れたさなお守りが入っていた。
「京に着いたら、すぐいてね。所を違えたら駄目だよ」と節子は何度目か分からない注をしながら、子の襟元を直した。子は「分かってるって」と笑ったものの、その笑顔はいつものようにく続かなかった。
「ちゃんとべるんだよ。具悪くなったらしないで、寮のに言うんだよ」
「母ちゃん、それ昨も聞いた」
「昨言ったって、今忘れるかもしれないでしょう」
「忘れないよ」
子はし照れたように返した。けれど列がホームへ入ってくる音が聞こえた瞬、表が急にくなった。
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12歳の子は、姉のすぐろにっていた。普段なら何でも姉へ言い返すのに、そのは喉に何か詰まったようで、最まで「寂しい」と言えなかった。子も「すぐ帰ってくるから」とは言わず、ただ度だけ子の肩を軽く叩いた。
「母ちゃんの言うこと聞けよ」
「姉ちゃんこそ」
「何が」
「らないについてかないでよ」
「子どもじゃないんだから」
そう言って子は笑った。15歳同士の会話ならおかしくないのに、子には姉が急にのふりをしているように見えた。
やがて引率の教師が声で名を呼び、若者たちが次々と列へ乗り込んだ。窓際に座った子を見つけると、節子はホームを移しながら何度もを振った。弟たちもびがるようにしてを振り、子も腕が痛くなるほど振った。
発の図が鳴った。
列がゆっくりきす。
族たちの声が斉にきくなった。
「子!」
「けよ!」
「体に気をつけろ!」
節子は列にわせて数歩った。子もその横を追いかけたが、窓のの子を見た瞬、が止まった。
姉はを振っていなかった。
両を膝のでく握り、唇を噛みしめていた。窓のを見ているのに、母とも子とも目をわせようとしなかった。
泣けば、本当にをれることになる。
子には、そんなふうに見えた。
列が見えなくなったあとも、節子はしばらくホームにっていた。
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やがて「帰ろうか」と言い、何事もなかったように弟たちを促したが、へ戻ると子の使っていた茶碗だけを片づけられず、器棚の番に置いたままにしていた。
子が就職したのは、京部にある部品だった。度成の波に乗って産量を増やしていたで、方の学から毎くの若者を採用していた。の裏には女子寮があり、方から来た女たちは畳ほどの部に4ずつ入り、朝は同じに起き、同じ堂でべ、鐘が鳴ればへ向かった。
子から最初のが届いたのは、京して週ほど経った頃だった。
封筒を見つけた節子は、畑仕事から戻ったばかりののついたを慌てて洗った。それから「子からだよ」と声をげると、子も弟たちも卓袱台の周りへ集まった。
便箋は3枚あった。
《京は本当にがくてびっくりしました。野駅では、どっちへ歩けばいいか分からなくなりそうでした》
《寮の部は4です。岩のと田のと、同じ青森だけど戸の方から来たがいます》
《の械は音がきくて、最初のはに帰ってもので音がしていました》
《堂では昼に魚がました。母ちゃんの焼いた魚よりさかったです》
《今度の曜、寮のと野を見にくかもしれません》
子らしいだった。
どうでもいいようなことまで細かくき、途にはさな絵まで描いてある。