"680億円の取引を救った秘密の多言語" 第7話
誰もが私の方を向き、信じられないものを見る目できを止めた。
「……はあ? お、何を言ってるんだ?」
「、冗談はいい加減にしろ! おとなしく黙って座ってろよ! 通訳なんてな、プロがやる度な仕事なんだよ!」
の社員たちも、私の突然の暴挙に呆れ顔でクスクスと笑いした。
「おい、が通訳だって? マジかよ……無理無理、聞いてるこっちが恥ずかしくなるわ」
私の両は刻みに震え、喉の奥が張り裂けそうだった。うまく呼吸ができなかった。
それでも――あの、学のの教とは、何かが決定に違っていた。
「お願いします……! 僕に、やらせてください」
織が、驚きと困惑のを浮かべてこちらをまっすぐに見つめた。その瞳の奥には、わずかな絶望のにほんのしだけすがるような希望が揺れていた。
「……くん、お願いできる?」
「はい」
そして、運命の交渉劇は静かに再された。
会議に再びい沈黙が戻る。そのすべての線のに、私がいた。
「失礼いたします。皆様のご発言、私が正確にお伝えしますので、どうかこのまま協議を続けていただけないでしょうか?」
そう言って私はフランス代表のブランシェ氏に向き直り、彼が先ほどにした言葉を、澱みなく正確なフランス語に変換して同に伝えた。
「フランス代表のブランシェ氏はこうおっしゃっています。
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『々はい敬を持ってここへ来た。しかし、目のにあるのはな侮辱だ』と」
ざわっと、本側社員たちの顔が斉に青ざめた。
「……そして、『このままでは、この取引自体を撤回せざるを得ない』と」
「ちょっと待ってください……!」
織の顔にはっきりとい揺がった。だが、私はさらに線を別の代表へと移す。今度は、ギリシャの文化財団代表である老齢のアナスタソス氏が、静かなギリシャ語で語りした。
「ギリシャのアナスタソス氏はこうおっしゃっています。『文化とは、ただ売買されるためにするものではない。それを理解しない者たちと、これ以話す言葉はない』と」
私の通訳が終わった瞬、会議の空気が激しく揺れた。今回の驚きは、単なる困惑ではなく、私の語学力に対する衝撃によるものだった。
「おおい、今の何だ……? 流暢すぎだろ……!」
「今のはギリシャ語です。お話しされる言語は、英語でもフランス語でも、どの言語でも構いません。すべて正確にお伝えします。皆さんが本当に伝えたいのいを、誤解なく伝えるために」
私の声は、もはや微も震えていなかった。かつて言葉を発することすらできなかったあの怯えたの声ではない。誰かを、そしてこのを守るために、自分のいで選び取った「声」だった。
すると今度は、チェコ側の女性・ペトラ氏が、慎に言葉をにした。
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「チェコのペトラ氏は、もしこちら側に誠ある謝罪があり、姿勢を改めるのなら、まだ話を続けてもいいとおっしゃっています」
織が、ゆっくりと自分の席からちがった。
「この度は、弊社の際、そして通訳の皆様への配慮の欠如により、皆様になるご迷惑をおかけしましたことを、よりお詫び申しげます。私たちはこのプロジェクトを通じて、文化を尊し、言葉のみを慈しむを、改めて真摯に見直すべきだと痛しております」
私はその彼女の言葉を、各国の言語へとつひとつ丁寧に訳して返していった。
英語、フランス語、ギリシャ語、チェコ語、イタリア語。
かつて私がで部に閉じこもり、むさぼるようにしてにつけた無数の言葉たちが、まるでき物のように私の喉の奥から自然とあふれていく。
そして、各国の代表者たちが、納得したように静かに頷いた。
「分かりました……続けましょう」
その瞬、会議の空気がはっきりと劇に変わった。張り詰めていた苦しい緊張が解け、まるで真の空に筋の温かい陽が差したように、部全体の温度がスッと戻ってきた。
「ちょ、ちょっと待て……お、いったい何カ国語が分かるんだよ!?」
「カ国語です」
会議の空気が瞬で凍りついた。すべての線が、斉に私というに突き刺さる。
「え……に、カ国語って……いつのにそんなに……!?」