"0427の暗証番号が暴く夫の秘密" 第19話
きよこさんは笑った。笑いながら目の縁を指で拭いた。
「あのそれ受け取るの。『賞期限がいならしょうがないですね』って」
私は笑ってしまった。笑って、そのままもう度泣いた。
その、きよこさんは自分の話をしてくれた。このはきよこさんが歳のに夫とで始めたものだった。
「うちのが勤めてたをやめてね、『喫茶をやる』って言いしたの。何の当てもないのよ。豆の入れ方も本で覚えたの。私は反対したわ。反対したけど、まあついていったのね。50やった」
子供はできなかった。だからこのがうちの子みたいなものだったのだ。
夫がくなったのはだという。朝の準備をしていて豆を引きながら倒れたそうだ。きよこさんは救急を呼んで病院までついていって、そののうちにみとった。
「その4は1でけてたのよ。と言っても昼のだけね。週何か。膝が悪くなってからはそれが精杯だった。てられなくなったら喫茶は終わりでしょう」
を閉めたのはのの終わりだった。優馬が来なくなったのと同じだった。
閉めた、産が何度も来たという。この所は駅からいけれど、としては悪くない。潰して駐にすれば毎いくらになるという話をされた。
「断ったの」
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「どうしてですか?」
「うちのがこのを張ったのよ。見て、ここちょっと反ってるでしょ。素がやったからよ」
きよこさんはの先でを軽く叩いた。
「これを潰す気にはどうしてもなれなかったの」
私は黙ってを見た。
「そこへ優馬さんが来たのよ。2目のだったかしらね。あの、コーヒーをんだあとにずっとのを見てるの。井とか壁とかとか、妙な見方をするなとったらこう言うのよ。『ここ、売っていただけませんか』って」
「私笑っちゃった。『あなた喫茶なんてできる顔してないわよ』って言ったの。そしたらあのは『いいえ』って言うのよ」
きよこさんはそこで黙った。
「『別れの女にしたいんです』って」
「別れた女って……」
私は膝のでを握った。
「私そのにね、このならいいとったの。理由はうまく言えないけど、このをにしようとしてないだってことは分かったから。それから何度も来たわよ。図面を持ってきたり、業者さんも連れてきたり、窓のところに1で座れる席を作りたいっていうの」
私は顔をあげた。あのはこう言っていた。
「『ここなら、泣きたいに1で来られるにできます』って」
その言葉は私のノートにあるだった。ほどにな字でいただ。あのはそれを覚えて、このまで持ってきてのでにしていた。
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私は子ので背を丸めた。何かに耐えるような格好になった。実際、耐えていたのだとう。
きよこさんがちがって、カウンターの奥の戸をけた。その先は畳ほどの板の部だった。事務兼物置きというところだ。さな机がつと、壁面の棚がある。棚にはカンの箱やのフィルターが積んであった。
「そこのダンボール、優馬さんが置いてったものよ」
机のに古い段ボール。蓋はいていた。を見て、私は息を止めた。
学代のアルバム。輪ゴムでまとめた昔の。雑誌の切り抜きを貼ったスクラップ帳。に押入れの奥から消えていた箱だ。その番に、表に何もいていない学ノートが乗っていた。で見た写しの原本だった。
私はそれを両で持ちげた。が湿気を吸って波打っていた。そのノートのもう冊あった。黒い表ののひらより回りきいノートだ。私はきよこさんを見た。
「優馬さんの、ここへ来るたびにいてたのよ」
私は棚のにったままそれをいた。字がぎこちなかった。あのの字は元からだけれど、このノートの字はもっと丁寧で、その分器用に見えた。ゆっくりいたのだと分かる。
過剰きだった。
《窓際にの席。子は。座面はい方がいい。居しづらいと本が言うから。
のは温かい牛乳。砂糖は別です。の昼はを先にす。女が無理しすぎないメニュー。