"0427の暗証番号が暴く夫の秘密" 第3話
のキャッシュカードだった。青とのなもので、隅に「瀬みつき」と印字されている。もうしないはずの名だ。
私はそれを何度も取りした。取りしてはまた戻した。引っ越しの度に財布を変えても、そのカードだけはしい財布の同じ所に移した。捨てようとったことは何度もある。ハサミを持ちしたこともある。それなのに、刃を当てる寸でが止まる。
夜勤けの朝は、部に帰っても眠れないことがかった。カーテンを閉めてものるさが入ってくる。そういう朝に私は財布をけた。カードを指でつまんで蛍灯にかざす。表面に細かい傷がついている。の、財布のでのものと擦れてついた傷だ。私はそれを見て、そして裏返してまた元の所に差し込む。それだけのことを何回も繰り返した。
度、通帳がないことに気づいて部を探したことがある。あの座の通帳は結婚していた頃、夫が仏壇の引きしにしまっていた。持ってた記憶はない。だから私の元にはカードしかなかった。残がいくらなのかもらなかった。結婚したばかりの頃、あの座には万円しか入っていなかった。夫が窓で作らせたにそう言っていたのを覚えている。だから私はせいぜい数万円はずだとっていた。
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活費の予備というくらいの座だと。そうっていたからなおさら使えなかった。数万円のために自分のの終わりをけちるのが嫌だったのだ。
同じことを繰り返しているうちに、私はつだけ分かったことがある。私はあのカードをおとして見ていなかった。あれは私にとって、あのが最に残していった言葉そのものだった。だから捨てられないし使えない。使ってしまえば言葉が消えてしまう気がした。
止まるのはあのつの数字のせいだった。「0427」。
。私と夫が入籍しただ。のその、私たちは仕事を退して役所へった。婚届の証の欄には夫の父と私の母の名が入っていた。窓の職員がハンコの位置をつ直させただけで、続きは分もかからずに終わった。拍子抜けするほどあっけなかった。
帰り際に通りかかったに頼んで、役所の板ので枚だけ写真を撮ってもらった。帰り、駅の商を歩いていたら夫が急にち止まった。ケーキのだった。
「買うか」
「え?」
「今、そういうだろ」
夫はに入って番いショートケーキをつ買った。で箱をけたらイチゴが片方だけ横に倒れていた。私たちはアパートのに座って、それをの皿に乗せてべた。夫はフォークを使わずに指でイチゴをつまんだ。
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「儀が悪い。洗い物が増えるだろ」
そう言って夫は笑った。あまり笑わないだったから、その顔を私はよく覚えている。
0427というのは、私にとってそういうの番号だった。なのに夫はのあの、その番号を「最」という言葉と緒に私に渡した。だから私は使えなかった。使ったら負ける気がした。何に負けるのかもよくわからないまま、私はそのカードに度も暗証番号を打ち込まなかった。
そして今のの末に、派遣の契約が切れた。ののことを、私は順番まで正確にいすことができる。
い返えば、そのの頃から夫にはしずつ変わったところがあった。帰りが遅くなった。夜に携帯を持ってへて、寒くもないのに玄関のでしばらく話していた。体が落ちて、シャツの襟りが緩くなった。私が理由を聞くと、「バテだ」とだけ言った。それでも私はく考えなかった。仕事が忙しいのだろうとっていた。あのはいつも自分のことを最に言うだったから、私はその癖に慣れてしまっていたのだ。
そのは朝から何も変わったことがなかった。夫は半に起きて、私が焼いたパンを半分だけべてていった。玄関で靴を履きながら、洗面所の球が切れかけていると言った。
「買っておくね」と答えた。その球を私は結局買わなかった。
夕方になって夫は珍しくく帰ってきた。