"0427の暗証番号が暴く夫の秘密" 第2話
く炊いてしまった飯は凍して次のにべた。台所にって鍋の量を目で測るたび、私は自分がまだ元の活を引きずっていることに気づかされた。
そのミルは結婚して目のに夫がくれたものだった。の胴に鉄のハンドルがついた古い形のもので、豆を引くとゴリゴリと鈍い音がする。誕でも記でもない普通のに、夫は仕事のに袋をげて帰ってきた。
「これ何?」
「いや……で見かけたから」
それだけ言って夫は呂に入ってしまった。箱をけたら古のミルだった。値札のシールを剥がした跡が残っていた。私はそのミルで豆を引いて、その晩に杯だけコーヒーを入れた。夫は湯呑みでそれをんだ。うちにはコーヒーカップがなかったのだ。
「うん、うまい」
夫はそう言った。はいつもそれだけだった。
婚の、私はのものをほとんど置いてきた。それなのにあのミルだけは箱に入れた。理由は自分でもよくわからない。んでいる相からもらったものを捨てられないというのは、そういう気持ちになったにしか分からないとう。
しい部に落ち着いてから、私はすぐに働きを探した。歳がい女で、履歴にかけるのは代の頃にの箱を作る会社で総務をしていただけ。
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あとはの空だ。面接にくと必ず同じことを聞かれた。
「この空は何をされていましたか?」
「私はのことをしておりました」と答える。相は「そうですか」と言って類に何かをく。何をかれているのかは分からない。ただ、話は来ない。結局、派遣の登録を社して、来た仕事を選ばずに受けることにした。
倉庫の仕分けはが寒かった。シャッターをけたまま作業をするので指がかじかんで伝票がめくれない。スーパーの品しは朝のに起きた。イベント会の設営もやった。名札に貼るに私は毎回「朝倉」といた。く度に自分の名をいすようだった。
番く続いたのはビルの夜清掃だ。夜のに入って朝のにる。オフィスのりを落としてを拭いてゴミをまとめてトイレを磨く。誰にも会わない。誰にも何も聞かれない。私にはそれがっていた。そこで組んだのが青さやかさんだった。歳で、髪をいつもいところで結んでいる子だった。
最初のにモップの絞り方を教えたら、さやかさんは真顔でこう言った。
「朝倉さん、それうちの学の先より教えるのです」
「学って?」
「美容の専です、言ってたんですけど途でやめちゃって」
さやかさんはそれ以言わなかった。私も聞かなかった。
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夜の掃除をしているには聞かれたくないことがつやつある。それはお互い様だった。
その代わり、私たちは休憩の分だけよく喋った。さやかさんは自販売の甘いカフェオレをみながら、「いつか自分のを持ちたいんですけどね」と言って笑った。笑いながら「まあ、無理ですけど」と自分で消した。私はその消し方をよくっていた。私も昔、同じやり方で自分の話を消していたからだ。
婚したことを母に伝えたのは、部が決まってからヶものことだった。母は潟でで暮らしている。父は私が学のに倒れてそのままくなった。以来ずっと母はあのにいる。話の向こうで母はしばらく黙っていた。それからい声で言った。
「そう。戻ってきてもいいんだよ」
「ううん。もうしこっちで働いてみる」
本当は帰りたかった。布団に入るたびに潟のの匂いをいした。それでも帰らなかったのは、帰ったらもう度とて直せない気がしたからだ。負けを認めるということが、あの頃の私にはどうしてもできなかった。
母はそれからに回だけ話を寄こすようになった。私の誕と、の終わりのだ。の終わりのについて、母は理由を言わない。ただ「変わりないかね」と聞く。私も「変わりないよ」
と答える。それで終わる。母が何のを数えているのかはお互いにさないままだった。
の、私は財布の奥に枚のカードを入れていた。