"0427の暗証番号が暴く夫の秘密" 第1話
「奥様、別へどうぞ」
その言葉のが、私にはすぐに分からなかった。
の終わりの平の昼がりだった。の縦の町にあるさな支の入りを入ってすぐのATMコーナー。私は械のにったまま、けずにいた。差し込んだカードが音をてて戻ってきた。画面にはい文章がていた。
《このカードはお取り扱いできません。恐れ入りますが、窓へお越しください》
暗証番号はまだ押していなかった。押すに画面が切り替わったのだ。
背の方でスリッパの音がした。振り返ると、の制を着た女性がっていた。私より実際ほどに見えた。そのは私のののカードを見て、それから私の顔を見た。目の縁が赤くなっていた。
「瀬みつき様でいらっしゃいますね」
私は頷くこともできなかった。に捨てたはずの旧姓を、らないのから聞いたからだ。
そのは私の正面に回ると、腰から折るようにくをげた。
「奥様、別へどうぞ」
「奥様って……私、もう婚しています」
「じております」
そのは顔をあげてこう言った。
「それでも、ご主様からそうお呼びするようにと伺っておりました」
でが鳴った。ロビーの隅で、がい音をてていた。
に私は夫に捨てられた。ずっとそうってきてきた。
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財布の奥に入れたままだったこの枚のカードは、そのにのひらへ押し込まれたものだ。この、私はこの支に入った。それだけのことで、私のののがすっかり変わってしまう。そんなことを、このの私はまだらなかった。
私の名は朝倉みつき。歳。今は何の仕事もしていない。の町にある「縦の荘」という古い造アパートの階にんでいる。階段をがるたびに板がきしむ音がする。部は畳とさな台所だけで、賃は万千円だ。それでも今の私にはい部だった。
まで私は瀬みつきという名だった。婚して旧姓に戻したので、今は朝倉に戻っている。役所の窓で類をした、担当のは名の欄を見ながら私に印鑑の位置を教えてくれた。それだけだった。私にとってはがひっくり返ったなのに、窓の向こうではそのの何件目かの続きでしかなかった。あのの事務な声を、私は今でも覚えている。
仕事は派遣の登録をしていつないできた。倉庫の仕分け、スーパーの品し、ビルの夜清掃。決まっては切られ、決まっては切られを繰り返した。その細い糸も、先の末で切れた。
私には子供がいない。結婚していたので随分泣いたけれど、婚してから度だけ、「それで良かったのかもしれない」
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とったがある。私が困っていればいいのだから。そうえたこと自体を、私は自分でもしくじた。
これは、婚したに元夫から押し付けられた枚のカードを、どうしても使えなかった女の話だ。
婚してからのを、私はだけできてきたとう。ていくと決めたから部を探した。歳で仕事も貯もない女に貸してくれる物件はなかなか見つからない。件目でようやく決まったのが縦の荘だった。産のが申し訳なさそうに言った言葉を今でも覚えている。
「あの、失礼ですけど、保証会社の審査さえ通れば丈夫ですから」
その「あの」のが私にはこたえた。私は笑ってをげた。「ありがとうございます。ちょうどいい広さです」と言った。ちょうどいいも何も、私にはそこしかなかった。
引っ越しのに運んだ荷物はダンボールがつと布団だけだった。暮らしたから持ってたものは、驚くほどない。と本と器がいくつか。それに、回しのコーヒーミルがつ。縦の荘の部にはガスコンロがついていた。それだけで御の字だとうことにした。
壁がいので、隣のテレビの音が聞こえる。夜勤けの昼に眠るは栓をした。事は自分で作った。米はにキロ買って、特売の野菜と卵でどうにかした。
作りすぎる癖がなかなか抜けなかった。の、分を作っていたは分の量を覚えるのにがかかる。