"消された母親の席" 第10話
「慶初等部はな、戦の華族女学の流れを汲んでいる。理事会の連が何より嫌うのは『血統の瑕疵』だ。学則の附則第条を見ろ」
先輩の指差した箇所を、私は目で追った。
『推薦入試における願資格者は、本学園規約に定める適格庭の嫡子に限るものとし、特別の事由なき非嫡子、または係争の親権にする児童の願はこれを受理しない』
「嫡子……」
「そうだ。の子、あるいは婚姻関係でまれた非嫡子は、慶の推薦枠には絶対に載せられない。条のような名の本妻が、で作った子供なんてもってのほかだ。もし綾という女が自分の子として葵ちゃんを願させれば、理事会内で派閥争いをしている連に嗅ぎつけられ、条の発言権は瞬で失墜する」
ので、バラバラだったピースが急速に引き寄せっていく。
「だから……」私の喉から、掠れた声がた。「だから、あの女は私に葵を産ませたことにした……?」
「その通りだ」
藤先輩は酷な事実を突きつけた。
「修平と綾は、最初からおを『戸籍のロンダリング装置』として利用したんだよ。おという、公の清廉で、ろ暗い親族関係を持たない真面目な教員の妻。その戸籍に葵ちゃんを『嫡子』として潜り込ませ、、完璧な庭ので育てげさせた」
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「そんな……じゃあ、あの子のお受験は……」
「おの母親としての役割は、願が受理される『今』までだったんだよ、真奈美」
先輩の言葉が、私の臓に々と突き刺さる。
「願がされ、推薦枠が確定すれば、あとはおを邪魔者として排除するだけだ。おが『直期のプレッシャーで精神に異常をきたし、児童を虐待した』という虚偽の事実を作りげ、親権止の審判を申してる。そして、綾が『憫にった親族の力者』として特別養子縁組を組み、葵ちゃんを法に条へ引き取る。完璧な筋きだ。おは最初から、使い捨ての代理母に過ぎなかったんだ」
「うそ……嘘よ……!」
私は両で顔を覆った。 指のから、涙がボロボロと溢れた。
私が毎晩、葵のたいをさすりながら絵本を読んでいたも。 初めて歩いたに、修平とで所の公園でべた百円のアイスクリームのも。 をした葵を背負って、真夜ののを児科へったあの夜も。
すべて、あののシナリオので踊らされていた、ただの茶番だったというのか。
「泣いているじゃないぞ、真奈美」
藤先輩の声が、鋭く私の識を引き戻した。
「相は今、公証役でおの実印を使って委任状を偽造し、親権放棄の公正証を作成する気だ。それが完成して法務局と裁判所に持ち込まれたら、いくらから無効を訴えても、審理には何もかかる。
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そのに葵ちゃんは条のへ送られ、度と会えなくなるぞ」
「どうすれば……どうすれば止められるの?」
「実印を奪い返すことだ。それと、連がなぜここまで『今』という付に固執しているのか、その裏付けを取る必がある。単なるお受験の願提だけじゃない。綾と修平のには、もっと々しい、か血のがあるはずだ」
先輩は元のメモ用に、本の話番号をりきした。
「俺の方で、慶の理事会内部にいるりいの監事に探りを入れる。おは度、アパートへ戻れ。修平たちがの隙を突いて、部に残されている痕跡を洗い直すんだ」
「でも、鍵が……」
「鍵なら、これを使え」
先輩は引きしから、特殊な形状をしたピックツールと、鍵の複製用ブランクキーを取りした。
「古い公団のシリンダーだ。の荒な真似になるが、お自の名義も入っている居だ。居侵入には問われない。急げ、真奈美。がねえぞ」
*
午半。 再び戻ってきた教員宅の階段を、私は息を殺して駆けがった。
階の廊にははない。 私は震えるでツールを鍵穴に差し込み、先輩に教わった通りにテンションをかけながら内部のピンを押しげた。 カチリ、という微かな応えとともに、ドアノブが回る。
部に滑り込み、音をてずにドアを閉めた。
内は、昨夜の嵐のような捜索の痕跡が々しく残っていた。