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"消された母親の席" 第7話

無理にかせなくても、の夕方には公証役で期が設定されているの。修平が代理として続きをめるから、あなたのサインがなくても、実印とこの委任状さえあればどうにでもなるのよ」

さんは静枝のから桐の箱を奪い取り、自分のバーキンの奥くへと滑り込ませた。

きましょう、お義母様。こんな埃っぽい部居したら、喉を痛めてしまうわ」

「そうだねえ、綾さん。で、お茶でもいただきましょう」

は私の横を通り抜け、玄関へと向かった。

ガチャリ、とチェーンロックがされ、い鉄のドアがく。

そして、側から鍵が差し込まれ、回されるたい属音が響いた。

カチャリ。

内側からドアノブを引いても、ビクともしなかった。から鍵をかけられたのだ。

けて……! けてよ!」

私は鉄のドアを拳で叩き続けた。ドンドン、ドンドンと、鈍い音が廊に響く。

だが、返ってくるのは、ざかっていくの軽やかなヒールの音と、静枝の満げな笑い声だけだった。

やがて、アパートの敷内から、あの音のエンジン音が響き、を切り裂いてざかっていった。

静寂が、戻ってきた。

暗い部に、私だけが取り残されていた。

どれほどのが流れただろうか。

私は暗に座り込んでいた。気をつける気力も起きず、に散らばった葵のさな靴や、幼稚園の連絡帳を抱きしめたまま、ただ震えていた。

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は、さらにまっていた。

窓ガラスを激しく叩く粒の音が、私の精神を削り取っていく。

すべてを奪われた。

葵の戸籍謄本も、実印も、願も。

警察に駆け込んでも、夫と姑が「庭内の親権の話しいだ」と言い逃れをすれば、民事介入で処理されるだろう。それどころか、綾さんの息のかかった慶の理事会がけば、私は本当に「精神異常者」として精神科へ隔されるかもしれない。

私には、何の力もない。

の権力も、級官僚や弁護士のコネも、数千万円を用てる財力もない。ただの、教員の妻。方からてきて、親の遺産もなく、パートと内職でいつないできた無力な女だ。

「お父さん……」

私は暗で、くなった実の父親の名を呟いた。

父は、方都さな仕を営んでいた。頑固で、無で、度も私に甘い言葉をかけてくれたことはなかったが、私が修平との結婚を決めた、病から震える通の封筒を握らせてくれた。

『真奈美、これだけは絶対に放すな。修平のは、おっているようなじゃない。いつかおがすべてを奪われそうになった、この鍵がおを救うはずだ』

そう言って渡された、さな古い真鍮の鍵。

私はフラフラとがり、寝の押し入れの奥へと向かった。

袋の奥、誰の目にも触れないよう、古い着物の帯の芯に縫い込んであったさな巾着袋を取りす。

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からてきたのは、父の遺品である、本の古びた真鍮の鍵だった。

鍵のには、さな番号が刻まれている。

庫 第408号』

父が際、全財産を処分してまで借り続け、私に託した貸庫。

には何が入っているのか、私は今まで度も確かめたことがなかった。貧しい仕の父が、貸庫に入れるような価な貴属を持っているはずもなく、私はただの形見分けの類だろうとい込み、触れることすら恐れていたのだ。

だが、修平の母親が言った言葉が、脳裏に霊する。

『あんたの父親がにどんな無礼を働いたか……』

父は、っていたのか?

修平と私がうよりもずっとから、父はこの悪を予見していたというのか?

そのに放置されていた私のスマートフォンが、ブブッ、とく震えた。

液晶画面が、暗に青く浮かびがる。

初等部のお受験サロン——「慶会」の幹事グループからの、斉送信通だった。

送信者は、条綾

メッセージのタイトルは、『第回・直親子決起集会および格祈願の宴について』。

私はすがるようないで、画面をタップした。葵の居所に関するがかりが、何かつでも写り込んでいるかもしれない。

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