"側溝の底のGPS" 第4話
暗号化された英数字の羅列のに、接続を許した親のSSID——ネットワーク名が表示される。
たい氷の塊が、喉から胃袋へと気に滑り落ちていくような覚がした。
『TERAUCHI_GUEST_EXT_2.4G』
寺内。 向かいの、寺内先ののガレージに設置されている、用のWi-Fi継器の識別名だった。
陽菜の端末は、、度たりとも調池ののになどっていなかった。 あの子がにつけていたものは、ずっと、あのから歩もかずに、寺内の波が届くあのたい排の奥底で、夜ごとに目覚め、波を発し続けていたのだ。
「……あ、あ……」
声にならなかった。 歯の根がわず、カチカチと音をててぶつかりう。
事故じゃない。 流されたんじゃない。 あの子は、あそこで——誰のによって?
なぜ寺内先のWi-Fiが? なぜ、あの側溝に? そして、なぜ——康平は、、私に黙ってこの端末の契約だけを残し、位置報追跡だけを解約したのか?
元から、世界が音をてて崩壊していく。 信じていた常。 申し訳程度に入れされた庭、ローンを払い続けるための節約、蓮の受験勉、隣との笑い。 そのすべてが、腐敗した汚のに浮かべられた、っぺらな張り子に過ぎなかったのだ。
午。 私は取り憑かれたように、をびしていた。
袋もせず、のカーディガンを羽織っただけの姿で、宅のゴミ集積所へと向かう。
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曜の午、そこには決まって、自治会の係を担当している野さんが、黄い防鳥ネットを畳んでいるはずだった。
野さんは、寺内先の奥さんとママ友で、この宅の古参だ。 陽菜がんだ当も、自治会の役員として、警察の捜査や事故の全対策の取りまとめに奔していた。
「野さん!」
荒い息を吐きながら駆け寄る私を、野さんは驚いたように振り返った。 にしたトングを止め、眉をひそめる。
「あら、志乃さん。どうしたの、そんな血相変えて。髪、乱れてるわよ」
「あの……お聞きしたいことがあって。の、あの事故のあとのことなんです」
野さんの顔から、ふっと微かに、しかし確実に温度が消えた。 彼女の細い目が、私を検分するように細められる。
「……? 陽菜ちゃんの?」
「ええ。事故の直、うちと寺内先ののの側溝、事が入りましたよね? あれは、どういう名目の事だったんですか? 誰が申請して、どこの業者が入ったのか……」
私のの問いかけを、野さんは乾いた袋の掌で制した。
「志乃さん」
その声は、驚くほど平坦で、ややかだった。
「まだ、そんなこと言ってるの?」
「え……?」
「あのとき、寺内先がどれだけ骨を折ってくださったか、忘れたわけじゃないでしょう。渠だった側溝にグレーチング(鉄格子)を嵌めて、暗渠のパイプを補して……に陳をして、全額、自治会の積との補助で賄えるように根回ししてくださったのよ」
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野さんは歩、私に詰め寄った。 品に入れされた髪のから、値踏みするような線が私の顔に突き刺さる。
「あれ以、あの所を『事故現』として警察やマスコミに騒がれたら、この区画全体の資産価値がどれだけ落ちたか。ただでさえ、あんな幸なことがあって……それでもみんな、さんのところを責めたりしなかったじゃない。お母さんが目をしたせいだなんて、誰もにさなかったでしょう?」
の奥で、キーンとい属音が鳴り響いた。
責めなかった? にさなかった? 違う。 で『注な母親』と指を差し、れみという名の隔を敷き、私たちがをげてきることをしてきたのは、ならぬこの町の々だ。
「蓮くん、今受験でしょう」
野さんは、トングでネットの端を器用に縛りながら、線をわせずに言った。
「寺内先のお孫さんの俊くんが格した、県貫を狙ってるって聞いたわよ。あそこはね、内申と保護者の域での活態度も、ものすごく厳しく見られるの。母親がいつまでも過の事故を引きずって、所の名士を嗅ぎ回るような真似をしてるってられたら……蓮くん、どうなるかしらね」
「私は、ただ、事実を……!」
「事実なら、に決着がついてるわ」