"暗証番号0427――元夫が残した24回の送金" 第3話
119に止まった
「遺言」という言葉のを、美はすぐに理解できなかった。
島は急かさず、革の鞄から分証と公正証遺言の写しを取りした。宮原が類の氏名と番号を確認し、佐々は湯気のつ茶を美のへ置いた。
「瀬優馬さんは、どこにいるんですか」
島は類を閉じ、姿勢を正した。
「昨119、交通事故でくなられました」
美のが茶碗に触れ、受け皿とぶつかって乾いた音をてた。泣くより先に、昨まで普通にきているとっていた男の顔が浮かんだ。無で、写真を撮るときだけ笑い方が分からなくなる顔だった。
「そんなはずありません。婚してから、連絡は度も……」
「事故は、鶴巻町から勤務先の寮へ戻る途で起きました。即だったと伺っています」
美は膝ので両を組んだ。爪が皮膚へい込んでも、力を緩められない。婚した相がどこで暮らし、何をべ、どんな仕事をしているのか、らないままでも構わないとっていた。それはきていることを提にした憎しみだった。会おうとえばいつか会えるという逃げが、たった言で塞がれた。
鶴巻町という名にも当たりはなかった。美は質問を続けようとしたが、喉が固まり、声がなかった。
15、が初めて話したのは、さな喫茶だった。
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父をくしたばかりの美が窓際で泣いていると、隣の席にいた優馬は何も尋ねず、帰り際に美のコーヒー代まで支払った。追いかけて礼を言うと、「泣いてるに話しかけるの、苦なんで」と目をそらした。
それから優馬は毎週曜、同じ刻にへ来るようになった。でいても会話はくなかったが、美がカップを空にするまで先に帰ることはなかった。交際を申し込んだでさえ、「緒にいると静かでいい」としか言えず、美に「それ、褒めてる?」と笑われた。
3の427、は婚姻届を提した。その翌週、優馬は美名義の座を作り、最初の5万円を入れた。
「いつかをやるんだろ。だったら、ここには使うな」
美のは、カウンターが5席、窓辺に1用の席があるさな喫茶だった。誰にも見られず泣きたいに、1で入れるにしたい。結婚したばかりの頃は、取りやメニューを学ノートいっぱいにいていた。
休にはで古の舗を見て回った。美が窓の向きや厨の広さを測り、優馬は見学のたびに黙って写真を撮った。条件のわないから帰るでも、美はナプキンに次の取りをき、優馬はそれを捨てずに持ち帰った。
けれど、優馬の父の町が傾き、夫が借を引き受けてから、の話はしなくなった。
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美も会社を辞め、計を支えることを優先した。優馬に「はどうする」と聞かれても、「もう昔の話」と笑って答えた。
その言葉を、本当に信じていたわけではない。ただ、の活を守るには、そう言うしかないとっていた。
「瀬様は、昨10に公正証遺言を作成されました。元配偶者である朝倉様は法定相続ではありません。そのため、を実現するには遺言が必だと理解しておられました」
島の説を聞きながら、美は机のの封筒を見た。優馬は事故の約1か、自分がんだあとの続きまでえていたことになる。
佐々が封筒を両で差しした。
には、便箋が3枚入っていた。最初のを見ただけで、優馬の字だと分かった。
『美へ。あの、理由も話さず婚を押しつけたことを、謝らせてほしい』