"暗証番号0427――元夫が残した24回の送金" 第2話
旧姓の座に残された連絡
美は封筒へ伸ばしかけたを止めた。
「これをいたのは、優馬ですか」
佐々はすぐには答えず、まず座の続きについて説した。カード自体が古く、磁気の読み取りにも具があること、登録所が結婚していた頃のままで、からの郵便が何度も戻っていたこと。そのため、本確認と氏名・所の変更が終わるまで取引を再できないという。
「暗証番号を職員がお尋ねすることはありません。しいカードが届いたあと、朝倉様ご自で操作してください」
そう言われ、美は初めて肩の力を抜いた。奇妙なのはカードの故障ではなく、別へ通された理由だった。
佐々は封筒をけず、机の端へ戻した。
「この封筒は、続きが終われば必ずお渡しできます。ただ、そのに連絡を取らなければならない方がいます」
「優馬本ではないんですか」
問いかけても、宮原は線を伏せた。代わりに、佐々が必類の覧を差しした。今の免許証で旧姓と現姓は確認できるが、所変更には補類が必だという。美は翌の予約を取り、をた。
自ドアがくと、たいが頬に当たった。朝から何もべていなかったが、空腹よりも、封筒の文字がかられない。
美は39歳だった。派遣先の物流会社との契約が終わったのは2かで、同じ週に続けていた夜清掃の仕事も現縮でなくなった。
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7社の面接を受けたが、返ってきたのは採用のメールばかりだった。
物流倉庫では午8から段ボールを積み、週3の夜は商業ビルのを磨いた。帰宅すると午1を過ぎ、指の関節がを持っていた。それでも働いているは、婚のことを考えずに済んだ。契約終を告げられた、空になったロッカーを見た瞬、美は仕事だけでなく、考えないための所まで失ったのだと気づいた。
通帳を理して残った預は7300円。部は築40を超えた造アパートの6畳で、賃の支払期限は4に迫っている。の晩、美は物のコートと靴を買い取りへ持ち込み、受け取った2400円で米を買うつもりだった。
流しのには半袋のうどんと、底の見えた醤油しかない。蔵庫の音が止まるたび、気まで切れたのかと顔をげる癖がついていた。部の隅には、優馬が結婚3目に買ってきた回し式のコーヒーミルがある。ほかの物は売れても、それだけは査定に持っていけなかった。
それでもカードを使えなかったのは、額の問題ではない。優馬が最に投げつけた「もう俺に関わるな」という言葉を、3、度も忘れられなかったからだ。
婚の5、残していた荷物を取りに旧居へ戻った。優馬は仕事でだった。押し入れの奥に積んであった3箱のうち、学代のノートや古い雑誌の切り抜きを入れた1箱だけがなくなっていた。
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尋ねようとったが、連絡先はすでに消していた。
洗面所の球がしいものに替わっていたことも覚えている。婚届をす朝、美が「帰りに買ってくる」と言いながら忘れたものだった。そんなさなことだけを済ませ、優馬は肝な理由を言も残さなかった。その矛盾を考えると、今でも胸の奥がざらついた。
部へ帰った美は、役所で取得していた類と免許証を机に並べた。端に置いた財布からカードが半分だけのぞいている。
なぜ今になって、優馬のいた封筒がにあるのか。なぜは、婚した自分を「奥様」と呼んだのか。
翌、美が予約刻の10分にへ着くと、佐々が入で待っていた。本確認と変更届を終えると、応接には昨いなかったスーツ姿の男性が座っていた。
男性は島と名乗り、弁護士の名刺を差しした。
「私は、瀬優馬様から遺言執者に指定されています」