"「お前は下がれ」白衣を脱いで5年、俺が社長令嬢を救った" 第3話
5ぶりの「藤先」
「榊原先……」
名札を見て、ようやくわかった。榊原亮先。学で2学だった先輩で、卒業も学会で何度か顔をわせていた。処置に集していた顔が、俺のっている表へ戻っていた。
「やっぱり藤君か。途から、もしかしたらとっていたんだ」
俺は作業着の胸元を押さえた。返事を探していると、秘に連れられて来たがち止まった。
「先のおりいなんですか。藤が、科の……」
榊原先は俺を見た。俺がうなずくと、へ顔を向けた。
「の医学部を首席で卒業した輩です。臓血管科へんで、難しい術も任されるようになった。若い頃から、よく名を聞きました」
がをきかけ、俺の顔を見直した。さっきまで、がれと言って俺の肩をつかんでいただった。
「藤が……そんな医者だったんですか」
「今も、必な報が理されていました。過労という最初の見てに引っぱられず、病状の変化を追ってくれた。私たちがく治療を始められたのは、そのおかげです」
俺は廊のを見た。褒められたことより、俺の言ったことが途で捨てられず、次のへ届いたことが胸に残った。
榊原先の携帯が鳴った。彼は画面を確かめ、俺の腕に軽く触れた。
「今度、を取って話そう。無理にとは言わない」
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「ありがとうございます」
彼が処置へ戻ると、が俺のにった。
「現でをすなと言って、悪かった。肩もらずに」
「俺が医者でなくても、あの数字と様子は確認してほしかったです」
は目を伏せ、わかったと答えた。さんは子に座り直し、隣の空席をで叩いた。
「藤、座れ。おまで倒れたら困る」
呼び方が変わっていない。そのことにして、俺は腰をろした。
病院を辞めてから38歳の今まで、5、医師として紹介されたことはなかった。作業靴の紐を結ぶ朝は、以の病院で何があったか考えないようにしていた。忘れられたわけではない。ただ、目のの仕事だけを見ることはしずつできるようになっていた。
病院をる、秘から沢社の言葉を伝えられた。娘を助けてくれたことへの礼と、落ち着いたら直接話したいという申しだった。
「今の対応について、会社からも確認させてください。藤さんのお名を記録に残してよろしいですか」
俺はさんを見た。彼は返事を代わりにしてくれなかった。ただ、急かさずに待っていた。
「はい。俺が話した内容も、したことも、そのまま残してください」
翌、の事務所で経過を確認した。資格について尋ねられ、医師免許証を提示した。仕事へ戻ると、同僚たちが言葉を選ぶように話しかけてきた。
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「藤さん、昨はすみません。俺、先がいるのにってってました」
「次に何かあったら、気づいたことを声にしてください。昨みたいに、通を空けてくれたのも助かりました」
彼はうなずき、俺のの検品箱を定位置へ戻した。俺はいつもの袋をはめた。仕事の順は変わらなかったが、休憩のベルが鳴ると、さんが堂の席を空けておいてくれた。
その晩、免許証をしまうため、押し入れの箱をいた。卒業式の写真が伏せてあった。に置かれた古い病院の封筒には、折り目がくついている。
俺は封筒をけず、免許証だけを戻した。箱の蓋は、すぐには閉められなかった。
数、美咲さんが般病棟へ移ったと連絡を受けた。い面会なら能だという。病を訪ねると、彼女は起こしたベッドので俺を待っていた。
「来てくださって、ありがとうございます」
まだ声はかったが、線ははっきりしていた。俺が子を引くと、美咲さんは膝ののファイルへを置いた。
「藤先。沢健太という名を、覚えていますか」