"「お前は下がれ」白衣を脱いで5年、俺が社長令嬢を救った" 第1話
その救急請を止めるな
「過労でしょう。し横になっていれば落ち着きます」
医師の言葉に、がほっと息をついた。俺はに敷いた着ので、沢美咲さんの呼吸を見ていた。唇がわずかにき、胸が浅く、速くいている。
沢グループの副社であり、社の娘でもある彼女が倒れたのは、ついさっきだった。検品台へを伸ばした体が傾き、案内役の俺が支えて座り込んだ。そばのラインが止まり、属の打音が途切れている。
「副社、聞こえますか」
呼びかけると彼女は目をけたが、俺の顔を見つけるまでにがあった。額には汗が浮いている。俺は作業用の袋をし、消毒したで脈を確かめた。速い。さっきまで歩いていたから、では済まない速さだった。
班のさんは、すでに携帯を取りしていた。
「救急を頼みます。血圧計と体温計も持ってきてください」
「藤、先が診てくださってる。おはがれ」
が俺の肩に触れた。診察していた男が顔をげる。
酒井修だった。
今、グループの医療顧問になったと朝礼で聞いた。今は全の打ちわせで来ていたのだ。顔を見るのは5ぶりだったが、の言葉を途で切るの目つきは変わっていなかった。
「会話はできています。まず医務へ移して、休ませましょう」
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酒井が言うと、社員が彼女を起こそうとした。俺はその腕を止めた。
「待ってください。今、状態を確認しています」
「君はのでしょう。判断はこちらでする」
俺は酒井から目をし、美咲さんへ向き直った。朝から引っかかっていた沢という名字と、その目元が、記憶の底にある顔へなりかけた。今は考えるな。目のの呼吸を見ろ。
「いつから具が悪かったんですか」
「昨……寒くて。腰も、し」
彼女はの腰へをかした。付き添いの秘が、朝も寒気を訴えていたと補った。俺がうなずいているに、総務の女性が医務の測定器を持ってきた。
袖をげてもらい、血圧計を巻いた。体温計の音が鳴る。38.9℃。続いて表示された数字を、俺は声にした。
「血圧は85の50。脈は125です」
のが、俺の肩かられた。さんが携帯をへ当てる。
「いがあるのに血圧がい。受け答えも鈍くなっています。い染症でショックを起こしている能性があります」
「げさだ。測定の誤差ということもある」
「測り直します。そのも、救急請は続けてください」
俺は美咲さんの腕を支えた。指先はたいのに、袖のの皮膚にはがこもっていた。呼びかけへの返事がくなり、目を閉じているが延びている。
「だけを見ているんじゃありません。血圧と呼吸と、識の変化を見ています。
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休めば戻ると、ここで決めてはいけません」
自分の声が、ったよりくまで通った。
この5、で必なこと以は話さずに過ごしてきた。部品を数え、異常があれば班に渡し、になれば帰る。誰かに命を預けられる所へ戻るつもりはなかった。
それでも、彼女の返事を待つ数秒がかった。もう関わらないと決めたことを守るために、この呼吸を見ないふりはできなかった。
さんが通報先へ所を伝え、俺に顔を向けた。
「今の数字、もう度頼む」
俺が読みげると、さんはそのまま伝えた。再測定でも血圧はいままだった。俺はを見げた。
「ここへ救急隊を通してください。医務で様子を見るはありません」
酒井が俺の胸元の名札を見た。それから、顔を確かめるようにを乗りした。
「藤……誠か」
俺は答えず、美咲さんの呼吸を見た。酒井の声が、さっきまでと違うさになった。
「まだ医者の真似をしているのか。5、患者を救えなかったことを忘れたのか」