"24年育てた息子の結婚式に、私の席はなかった" 第2話
般席なら、来てくれるか
翌朝、彦は玄関の鏡のでネクタイを結んだ。曲がっているのに気づいたが、私はいつものようにを伸ばさなかった。夫は何度か結び目を引きげ、振り返った。
「話にはられるようにしておけよ」
私は台所から返事をしなかった。昨までなら、同じでホテルへ向かうはずだった。夫がていくと、予約を取り消したに起きた私だけが、普段のでに残った。
挙式は午11。その1半に、夫の妹の美恵子から話がかかってきた。
「恵子さん、具はどう? お兄ちゃん、朝になって体調を崩したって言うから。1でにいるの?」
流しで洗っていた湯呑みを置いた。話の向こうには、の挨拶と、いを歩く靴音が聞こえた。
「具は悪くないの。昨、優斗から来ないでと言われたのよ」
「……誰に?」
「優斗に。親族席には実母が座るから、式にも披宴にも来ないでって」
美恵子はすぐには言葉を返さなかった。やがて音がのき、扉の閉まる音がした。話せる所へ移ったのだろう。
「お兄ちゃんもってるの?」
「隣で聞いていたわ」
「それで、体調のせいにしたのね」
っているのは美恵子なのに、私のほうが謝りそうになった。せっかくのお祝いのに、面倒をかけてしまった。その言葉がをるに、彼女が続けた。
「恵子さん、謝らなくていいから。
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私はお兄ちゃんに確認する」
話を終えたあと、私は湯呑みを切りかごへ伏せた。普段なら数分で済む洗い物の途で、何をしていたのか分からなくなる。スーパーの仕事も、今は息子の結婚式だからと休みにしてもらっていた。
美恵子からもう1度連絡が来たのは、洗い物を終えた頃だった。
「お兄ちゃん、優斗と話しって決めたことだって言ったわ。私、恵子さん本が嫌だと言っているのに話しいとは言わない、って返した」
彼女は夫と廊で話したという。謝って欠席理由を訂正するよう求めると、夫は「今さら騒がせるな」と言い、優斗を呼びに戻ったそうだ。
「私まで、恵子さんが病気だって話にわせる気はないからね」
「ありがとう。でも彩乃さんの式まで、止めなくていいのよ」
「分かってる。だからまず、あの2に話してるの」
通話を終えると、待っていたように夫からメッセージが届いた。
《今から来られるか。着物でなくていい。般席なら用できる》
私は文章を最まで読み、玄関に置いたままのバッグを見た。には、入れをした履と、予備のハンカチが入っている。髪だけでもえてタクシーを呼べば、まだにうかもしれない。そう考えた自分に気づき、子へ座り直した。
夫が求めているのは、私が見たかった息子のれ姿を見せることではなかった。
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母親の席をしたまま、欠席の理由だけを消したいのだ。
《きません。優斗と決めたとおりにしてください》
送信すると、すぐに話が鳴った。
「を張っているか。美恵子が納得しないんだよ」
「私がけば、あの子に何と言うの?」
「おから、丈夫だからって言えばいいだろう。親戚の席なら、同じ会にいられるんだぞ」
彦は声を抑えていた。では私の返事を待たずに話を終えるが、今は話を切られることを気にしている。その息遣いを聞きながら、私はバッグを子のへ押し戻した。
「昨、本の式だから任せてやれと言ったでしょう。任せるわ」
「恵子、こっちのも考えろ」
「私の席をなくしたには、考えなかったのね」
夫が黙った。私は呼吸をえ、もう1度だけ、席しないと伝えて話を切った。
通話の終わった画面を伏せると、台所の計の音が聞こえた。夫からの話は、それきり鳴らなくなった。
遅い朝を取ろうと蔵庫をけたところで、携帯がく震えた。優斗からの謝罪ではなく、彦からだった。
《向こうには体調が悪いと伝えてある。連絡が来たら、その説だけはわせてくれ》