"院長が頭を下げた看護師の妻" 第10話
今度は、聞く番だった
「どんな変化がありましたか」
俺は護師へ顔を向け、患者のそばへ寄った。男性は胸元のをつかみ、浅く息をしていた。問いかけには答えるが、診察台を握ったには力が入っている。
「先ほどより痛みがいそうです。背にも汗をかいています。横になってからも、楽にならないと」
護師が伝えるに、俺は男性へ声をかけた。痛みがどう変わったかを確かめ、状態を診ながら再検査を指示した。
「しすれば、とって」
男性はそう言って唇を結んだ。護師は彼の肩に掛かっていたタオルを直し、そばにった。
「さっき、そうおっしゃっていました。でも、汗の量が増えたので気になりました」
届いた図を来院のものと比べると、変化があった。俺は同じ科の担当医にも連絡し、必な処置と入院の準備をめた。予定していた検査の順番を、そのまま待たせる状態ではなかった。
護師が別のスタッフへ声をかけると、患者のそばにが集まった。俺は男性へこれからうことを説し、聞き取った言葉を確かめた。息が落ち着くまで、質問を続けて答えを急かすことはしなかった。
男性の着から携帯が鳴った。彼が起きがろうとしたので、俺はそのままでよいと伝え、族への連絡を職員に頼んだ。
「仕事先からも、話が来るかもしれません」
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「今は治療を優先しましょう。連絡が必な相を、担当の者と確認できます」
男性は頷き、診察台の端からをした。
処置をめ、入院先へ引き継ぐ頃には、先ほどよりく言葉を話せるようになっていた。俺は移送の状態を確かめ、護師へ連絡事項の確認を頼んだ。
ベッドが廊へると、最初に声をかけた護師が俺のそばに残った。
「すぐに診てくださって、ありがとうございました」
「変化を伝えてくれて、助かりました。本がしていたことも、聞けてよかった」
護師はし驚いた顔をしてから、頷いた。記録へ戻った彼女の横で、俺も診療の経過を入力した。誰が何を見つけたのか、引き継ぐに分かるようにいた。
夕方、久世先から、藤堂が般病棟へ移ったと連絡があった。治療は続くが、族と話せるようになったという。俺は話を置き、く息を吐いた。
夜、帰宅すると、奈々は卓で勤務表を見ていた。俺が鞄を置くと、空いていた子をし引いた。
「お疲れさまです。今はどうでしたか」
俺はを洗ってから座り、患者が分かる話は避けて、護師の報告を受けて対応をめたことを話した。奈々は頷いたが、よくできましたと褒めるようには笑わなかった。
「気づいたことを言えて、よかったですね。その方も」
「うん。次も、途で止めずに聞きたい」
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奈々が勤務表へ目を戻した。俺も鞄から自分の予定をし、隣に置いた。
「戻ったの勤務、もう決まったのか」
「はい。このは帰りが遅くなります」
妻が指した欄を見て、俺は自分の予定を確かめた。以なら、夕飯はどうするかと聞いていたところだった。
「そのは俺がい。買い物と夕飯は引き受ける」
奈々は俺を見た。それから、別のの欄へ指を移した。
「ここは、あなたが当直ですね。翌朝は、朝を置いておきます」
俺たちは帰るだけでなく、休むも確かめた。予定が変わったは先に連絡し、遅くなるに無理に料理をしないことも決めた。俺は買い物の欄を自分の携帯へき込んだ。
その週の終わり、奈々の4週の応援勤務が終わった。帰ってきた妻は、学病院で使った資料を鞄からし、元の病院へ持っていく物を入れ直した。
俺は台所で、洗って乾かした弁当箱を棚からした。いつも奈々が使うさめの箱と、自分の箱を並べる。
「の弁当は、俺が作るよ」