"院長が頭を下げた看護師の妻" 第9話
講師、佐藤奈々
「受講する。俺も、やり直してみたい」
そう答えたの約束どおり、俺は研修の列に座っていた。配布された表には、観察・報伝達の講師として、佐藤奈々とかれている。
隣の子を引いたのは宅だった。彼は自分で参加を申し込み、始に資料へ目を通していた。奈々がへると、いていたページをそちらへ向け直した。
壁際には模擬患者用のベッドがあり、机のに役割別のカードが置かれていた。桜庭師と教育担当の医師がを支え、奈々は参加者の顔を見てから説を始めた。
「最初から、全員に同じ報があるわけではありません。自分がったことを、相へ伝えてください」
俺と若い護師、宅が最初の組になった。患者役の職員がベッドへ横になり、護師役へカードが渡された。俺の元には、来院の報だけがある。
「先、先ほどと様子が違います」
若い護師が言った。俺はカードを見ながら、どこが違うかと尋ねた。
「呼びかけると返事はありますが、さっきより遅くて」
「数値は?」
聞いてから、自分が話を途で切ったことに気づいた。護師のが閉じ、持っていたカードが胸元へ戻った。
奈々はすぐに正解を言わなかった。俺たちのやり取りを見てから、演習を止めた。
「佐藤先、今、何が変わったと受け取りましたか」
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「返事が遅くなった、と」
「ほかに、伝えようとしていたことはありますか」
奈々が護師へ尋ねると、彼女は頷いた。患者役の返答が途からくなり、たい汗もていたという。俺のカードにはかれていない報だった。
「数字も確認は必です。ただ、今はまだ、こちらの観察が途でした」
奈々は俺を見た。恥ずかしさで、仕事ならそうはしないと言い訳しかけた。だが実際に、藤堂のそばでも俺は聞き直している。
「もう1度、最初からお願いします」
俺が言うと、護師はカードを持ち直した。
同じ呼びかけに、今度は顔を向けて答えた。いつから、どのように変わったのかを聞き、自分が受け取った内容を声にした。必な評価へもうとすると、宅が周囲への連絡を引き受けた。
「確認できたら、ここへ戻って報告する」
誰が何をするかが決まり、若い護師は患者役のそばへ戻った。最初に止まったところを越えて、演習が最までんだ。
振り返りで、奈々は護師にも尋ねた。
「途で話が切れた、言い直せそうでしたか」
「最初は、もう必ないのかといました。2回目は、先がこちらを見てくださったので、続けられました」
俺は資料の余に、その返事をいた。何を話すかだけを練習しても、聞く側が閉じていたら届かない。自分の顔の向きまで、相の判断に入っていた。
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次の組で、宅が医師役を務めた。報告がなると、彼はそれぞれの名を呼び、続きを求めた。終わった、奈々へ向き直った。
「もう1つ確認していいですか。聞き取れなかったは、どこまで戻して聞くのが伝えやすいですか」
宅はペンを構え、妻の答えを待っていた。初に見を笑った男が、今はそのの言葉をき留めている。
研修が終わっても、奈々のには質問するが残った。俺は参加者の子を戻し、壁際から見ていた。自分がへて妻の経歴を説する必は、どこにもなかった。
片づけを終えた桜庭師が、所属先と調して次の研修も相談したいと奈々に伝えた。妻は使ったカードをそろえながら、次は護師が報告を言い直す面も増やしたいと答えていた。
その数、診療の俺に、若い護師が声をかけた。奈々はそのの救急担当には入っていなかった。
「先、気になることがあります」
護師の線の先で、胸の痛みを訴えて来院した患者が、診察台の端を握っていた。