"院長が頭を下げた看護師の妻" 第8話
私だけを例にしないで
「自分でけるだけじゃなくて、困っているが声をせるようにしたいです」
奈々はそう答え、ノートを鞄へ戻した。翌、その言葉をいす面があった。
申し送り、宅がナースステーションへ来た。俺が記録を確認している机のそばでを止め、奈々を呼んでもらえないかと尋ねた。桜庭師が顔をげた。
「佐藤さんは、もうすぐこちらへ戻ります」
宅は頷き、待っていた。初に彼のを聞いていた同僚も、医局で居わせた若い医師もいた。誰かが雑談を始めかけたが、宅は笑わずに奈々の方を向いた。
「おをいただけますか。ここで、お詫びしたいことがあります」
奈々は持っていた記録を机に置いた。宅はのポケットからをし、脇へろした。
「応援に来られたに、見をからかうようなことを言いました。仕事をろうともしないで、佐藤の妻だからという見方をしていました。申し訳ありません」
宅がをげた。奈々は何も言わずに待っていた。彼が顔をげても、をませるようには笑わなかった。
「それから、院のおりいだから特別扱いされたと、医局で言いました。あれも、私の決めつけでした」
宅は奈々のろにいた医師たちへも向き直った。
「皆にも聞いてほしい。俺が確認しないで言った話だ。
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佐藤さんの働きを、ああいう言い方で片づけるべきじゃなかった」
初の同僚が目を伏せ、若い医師が頷いた。俺も子からったが、宅をかばう言葉を探すのはやめた。
「聞いてくださって、ありがとうございます」
そう言って宅がもう1度奈々を見ると、妻はをいた。
「訂正してくださったことは、分かりました。ただ、私だけじゃなく、ほかの護師の話も聞いてください」
宅は返事をしかけ、奈々が続けるのを待った。
「院先と面識のないでも、経験が浅いでも、患者さんの変化を見ていることがあります。私の話を聞く理由が、院先に助けを求められたからだけなら、同じことが残ります」
机の端にいた若い護師が、伏せていた顔をげた。宅はそのにも目を向け、それから奈々に答えた。
「分かりました。今の対応で、改めます」
「お願いします」
奈々は記録をに取った。俺が像していたような、涙を浮かべての仲直りにはならなかった。宅は自分で言った言葉を、そのの全員に聞かれたまま廊へ戻っていった。
午、桜庭師に呼ばれ、俺はい打ちわせに加わった。奈々のには、急変の同研修の案が置かれていた。師は院内の教育担当とも相談したという。
「佐藤さんに、観察と報伝達の部分をお願いしたいんです。
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今回の経験を、次の勤務につなげたいので」
奈々は案を読み、災害経験についての講話とかれた箇所で指を止めた。
「ここは、実際に声をかけう演習に変えてもいいですか」
「どういう形を考えていますか」
「報告したつもりでも伝わっていない、もう1度言い直せるように。医師と護師が、緒にやってみる形です」
桜庭師はペンで案をき直した。奈々は修正された箇所を読み直し、「この形なら、ぜひ」と答えた。俺も、自分たちの科から参加できるを確かめた。奈々は所属先での輩指導に使っていた例をもとに、こちらの設備にわせて準備すると言った。
「診療の判断に関するところは、先方にも確認していただきたいです」
「引き受けるよ」
俺は答えた。妻の隣で説を補う役を、自然にい描いていた。だが奈々は資料から顔をげ、俺に尋ねた。
「先も、受講してくださいますか」