"院長が頭を下げた看護師の妻" 第7話
話せなかったこと
「表彰のこと、気になっていますよね」
その夜、奈々は着を脱いで子に掛けた。帰りで俺が何も尋ねなかったからか、鞄を置くにこちらを見た。
「気にはなってる。でも、今夜話さなくてもいい」
奈々は鞄をろし、窓際へ歩いた。カーテンを閉めてから、ソファの端に腰をろす。俺は台所からを持ってきて、妻のが届く所に置いた。
「しだけなら、話せるといます」
俺が隣に座ると、奈々はコップを両で包んだ。
救護所では、いつも誰かがを探していたという。診察を待つ、薬のことで相談に来る、族がどこへ運ばれたか尋ねるがいた。奈々たちは声をかけい、の空いたが次の対応へ回った。
「毛布がほしいと言われたことがありました。取りにこうとした、別の患者さんのことで呼ばれたんです」
必な対応を済ませ、毛布を持って戻ったには、その所に別のが座っていた。最初に頼んだはほかの担当者に案内され、すでに移していたらしい。
「ほかの方から受け取れたのかもしれません。でも、私は確かめられませんでした。持って戻った毛布を、そのまま抱えていたのを覚えています」
俺は何か言おうとして、を閉じた。ほかの誰かが渡しただろうと、見てもいないことを言うのは簡単だった。
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「全部を自分でできないのは分かっています。だから、引き継ぐんです。それでも、からいすのは、うまくできたことばかりではありません」
窓のをが通り、がカーテンのを横切った。奈々はコップを置き、指先を膝で拭った。
「戻ってからも、についたの匂いをじるがありました。洗濯はしてあるのに。音で、あの所をいすこともありました」
「誰かに話せたのか」
「緒にったには。病院でも相談しました。普通に働けるが増えて、研修で経験を話せるようにもなりました。でも、話したくないもあります」
奈々は線を落とした。俺はを寄せかけたが、肩に触れるにを止めた。妻の方から、俺のの甲へ指を置いた。
「表彰の話が来た、自分だけがにって、謝される姿を像できませんでした」
「ほかのたちのことが、気になった?」
「それもあります。けれど、私自が、壇でうまく笑える気がしなかったんです」
奈々は指をし、ソファの背にし体を預けた。
「今、院先がお元気に話されるのは、うれしかったです。あの方をお支えできたことまで、なかったことにしたいわけではありません」
俺は頷いた。帰りで、派なことをしたのだからもっと誇ればいいと、励ます言葉を考えていた。そのままにしていたら、妻にもう1度、皆がぶ顔を求めていた。
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「今は、ここまでにしてもいいですか」
「もちろん」
奈々は息を吐き、ちがった。俺は残っていたを流し、コップを洗った。背でクローゼットの扉が閉まったが、続きを聞こうとはしなかった。
着替えて戻った妻は、鞄からいノートをした。古い記録かとったが、かれたページには、先の研修でいたメモが並んでいた。
「次に参加する、聞きたいことをいておこうとって」
奈々はペンを取った。患者の変化を伝えたのに返事がない、若い護師はどこでもう1度声をせばよいのか。メモの脇に、妻自の疑問がきされていった。
俺はそのノートを、妻が閉じるまで待った。奈々が仕事の悩みを、俺にも話そうとうは来るだろうか。今夜だけで答えを求める気にはなれなかった。
奈々が顔をげた、俺は過の続きを尋ねる代わりに聞いた。
「これから、どんな仕事をしたい?」