"院長が頭を下げた看護師の妻" 第4話
聞かなかった3
奈々は院に、し考えるがほしいと答えていた。
そのの夜、俺が帰ると、卓には湯のみが2つ置かれていた。いつもなら呂を先に済ませるところだったが、鞄を子の背へ掛け、そのまま奈々の向かいに座った。
「院とは、いつりったんだ」
奈々は湯のみの縁を見ていた。
「昔、仕事でご緒したことがあります」
「変な現だったのか。昨みたいな」
「昨とは、違う変さでした」
そこで妻の言葉が止まった。俺は待つべきだった。けれど、らないままにされていたような気持ちが先にた。
「どうして今まで言ってくれなかったんだ」
奈々が顔をげた。俺を見たまま、しばらく黙っていた。
「救急の仕事をしてきたことは、お話ししましたよ」
「それは聞いてる。でも、院があんなふうに」
「初めてお会いしたも、今の病院へ移ったのことも。休に研修へくにも、話しました」
俺は返事を探した。記憶ので、奈々は確かに何か説していた。だがいせるのは、その晩の事が蔵庫に入っていると言われたことだった。
「先、休みのにかけたでしょう。どこへったか覚えていますか」
研修だったことは覚えている。何を学ぶのか、誰とくのかはらなかった。俺が黙ると、奈々は自分で答えた。
「急変した患者さんの報を、どう共するかという研修でした。
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帰ってから、面かった例をお話ししようとしたんです」
その、俺は翌の会議の資料を見ていた。話の途で、夕飯は何かと聞いたことをいした。
「私は21、護師をしています」
奈々は静かに言った。
「あなたと結婚するにも、い、病院で働いていました。全部をお話ししたわけではありません。でも、何も話さずにいたわけでもありません」
俺は湯のみへ伸ばしかけたを引いた。妻の過をらないことを、妻が隠したせいにしかけていた。
「俺が、聞いてなかったんだな」
奈々はすぐには頷かなかった。指先で湯のみをしかし、それから俺を見た。
「仕事のことを話しても、あまり興がないのかとっていました」
廊で宅が笑った、なぜ言い返さなかったのか。その理由も、ようやくにできる気がした。
「応援に来た、宅が君のことを言ってた。俺は止めなかった」
「聞こえていました」
俺は顔をげた。奈々は膝ので両をねていた。
「あなたが横を通ったのも、分かっていました」
「気にしてないように見えたんだ」
言った途端、それも自分を守るための言葉だと分かった。奈々はさく息を吐いた。
「勤務でしたから」
その返事だけで分だった。俺は俯いた。妻が表を変えなかったことを、自分が何もしなくていい理由にしていた。
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「君を見したことがあった。俺の活を支えてくれるだとって、それ以をろうとしなかった。宅の言葉を止めなかったのも、俺が同じように考えていたからだとう。すまなかった」
奈々は黙って聞いていた。俺は顔をげ、返事を急かさずに待った。
「昨のことがなくても、仕事の話を聞いてほしかったです」
「うん」
「院に何か言われたから、切にしようとうのも、し寂しいです」
俺は頷いた。謝ったからといって、その寂しさまで今夜のうちに消せるわけではなかった。
卓の端で携帯がった。俺は画面を確認し、急ぎの用件ではないと分かると裏返した。
「今、聞いてもいいか。話したくないところは、言わなくていい」
奈々はし考えてから、先の研修で扱った例について話した。途で言葉を選び、湯のみを持ちげた。俺は分からなかったところを尋ね、妻の答えを聞いた。
お茶はすっかりめていた。奈々がとうとしたので、俺が湯を沸かしにった。
戻ると、妻は園部院へ送るい返事を考えていた。
「先ご自の経験と、私が仕事で何をしたか。その範囲なら、お話ししていただこうといます」
「ほかのことは?」
「今は、皆さんのでは話せません」
俺は頷いた。妻が返事を送るまで、横から画面を覗くことはしなかった。