"院長が頭を下げた看護師の妻" 第1話
院がをげた相
「先、呼びかけへの反応がくなっています」
妻の声で、俺は患者の顔へ目を戻した。浜医科学附属病院の救急処置で、モニターの警報が鳴っていた。脈解で運ばれてきた藤堂次郎の血圧が、急にがっている。
俺が臓のエコーを確認していると、処置の扉がいた。園部院はベッドへづき、側につ護師を見てを止めた。
「佐藤さん。どうか、力を貸してください」
院がくをげた。相は循環器内科医の俺ではない。見い結婚して3になる、妻の奈々だった。
隣で宅がをけた。何か言いかけたまま声がない。俺もプローブを持つに力が入ったが、奈々はすでに患者へ向き直っていた。
「桜庭師、護側の連携を佐藤さんにお願いします。私が責任を持ちます」
「はい。奈々さん、こちらの連絡をまとめてください」
桜庭師が話を受け取り、奈々のそばへ寄せた。奈々は頷き、俺の目を見た。
「先、指示をください。こちらはけます」
その声で、俺は画面の所見をにできた。
「タンポナーデを起こしている。久世先に状態の変化を伝えて。輸血と術の準備状況も確認してください」
奈々が内容を復唱し、そばにいた護師へ連絡を頼んだ。担当が決まると、それまでなっていた声が順に返ってきた。
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俺は宅と所見を確かめ、必な指示をした。
藤堂は72歳で、国内にいくつもの会社を持つ企業グループの会だった。医の画像と搬送連絡を受け、臓血管科にもすでに連絡していた。必なことは分かっていたはずなのに、到着直から別の声が割り込んできた。
会社の秘は診療の見通しを求め、事務の職員は族への説を急かした。俺が患者の胸へを伸ばしているにも、入から名を呼ばれた。
奈々はベッド脇を空けるよう頼み、族への連絡を担当する職員を確認した。園部院も入へ戻り、秘たちを別へ案内するよう指示していた。
「先ほどまでは名を呼ぶと目をけていました。今は返事がありません」
奈々は変化の順番を伝えた。モニターの数字だけではない。顔、呼びかけへの反応、苦しさを訴えたの言葉。それを聞きながら、俺は今う処置を選び直していた。
妻は同じ法の浜医療センターから、4週の応援で来ていた。勤務に入るに救急部の設備と順を確かめ、桜庭師と持ちを決めていたことを、俺もっている。
それでも、目のの姿は俺のっていた奈々と違った。
朝、弁当を渡してくれるは、いつもし首を傾けて笑う。仕事の話を聞いても、忙しかったかと尋ねるくらいで終わっていた。
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同じ42歳で、互いに医療の仕事をしている。それだけで、分かっているつもりだった。
応援初、宅はナースステーションので同僚に言った。
「佐藤ほどの医者が、ずいぶんな嫁さんをもらったな」
俺は類を持ち直し、その横を通り過ぎた。言い返すと余計に妻へ注目が集まる。そう自分に言い聞かせたが、あので緒に笑わなかったことを、かばったことの代わりにしていた。
今、その宅が奈々から受け取った報を俺へ伝えている。
「久世先がこちらへ向かってる。画像は確認済みだ」
「分かった」
俺が答えると、奈々は患者の肩に触れた。藤堂の指がシーツを探るようにいたので、点滴の管に引っかからないようを添えた。
「藤堂さん、そばにいます。今、先たちが診ていますからね」
柔らかい声だった。で聞く声と同じなのに、俺は初めてその相を見ている気がした。
「術、受け入れ準備がんでいます」
報告を受けても、はできなかった。ベッド脇には移送に使う器が運ばれ、桜庭師がの通る所を空けていた。患者の状態を支えながら、科へつなぐ。そのために、まだやることがある。
俺は奈々が差しした必物品を受け取り、宅を呼んだ。
処置の扉がき、臓血管科の久世慎が入ってきた。