みかん小説
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"毒を運ばされていた私" 第6話

突然、神崎医師は鳴り声をげた。 机の端を叩くきな音が、狭い受付に響き渡る。 呼吸を乱し、肩をらせて私を睨みつけるその目は、純粋なりではなく、底れぬ恐怖に怯えているように見えた。

体ね、咲子さん。君はただの訪問ヘルパーだろう。利用者の部から勝に遺品を持ちし、昔の因を嗅ぎ回るなんて、越権為もだしいぞ」

「私はただ、事実をりたいだけです。清原さんの部の畳のに、相馬さんの未封の薬が隠されていたんです。なぜ清原さんが、の薬を隠し持っていたんですか」

神崎医師の瞳が、恐怖できく見かれた。 「畳の」という言葉を聞いた瞬、老医師の唇がわななき、言葉を失ったようにパクパクといた。

「……帰れ」

「先

「帰るんだ! これ以妙な言いがかりをつけるなら、君の所属する介護事務所の所に連絡する。守秘義務違反と、者への冒涜で訴えてやるぞ!」

神崎医師は乱暴に擦りガラスの窓をピシャリと閉めた。 からカギを掛ける、属の鋭い音が響く。 カーテンが引かれ、受付の奥の気配は完全に遮断された。

私は暗い診療所の玄関に、ぽつんと取り残された。

のひらには、びっしょりと汗が滲んでいた。 神崎医師のあの狼狽ぶり。 あれは「何もらない」の反応ではない。 畳のに隠された秘密、そして相馬栄造という名に、彼は即座に致命な危を抱いていた。

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診療所をて、団央にあるさな児童公園のベンチに腰をろした。 錆びたブランコがに吹かれて、ギィ、ギィと寂しげな音をてている。

を、の記憶が激しい勢いで駆け巡っていた。

私は、清原フミの何を見てきたのか。 「が痛くて台所にてないの」と甘えるように言う彼女のために、私は毎回、お茶を沸かしていた。 台所の棚の奥、遮瓶に入れられた、独特の青臭い匂いがする茶葉。

『咲子さん、このお茶はね、田舎の親戚が送ってくれる特別な野茶なのよ。これをむと、胸の苦しみがすうっと引いて、よく眠れるの』

清原さんはいつも、私にそのお茶を煎じさせた。 だが――今にしてえば、異常な点がいくつもあった。

清原さんは、のヘルパーが代で入るには、絶対にそのお茶を沸かせようとはしなかった。 「あの子たちは雑だから、加減を違えるのよ。咲子さんが来てくれるだけでいいの」と、柔らかく笑って拒んでいたのだ。 そして、私がお茶を急須から注ぐ元を、彼女は常に、万からじっと見つめていた。 瞬きもせず、息を殺すようにして。

あのお茶は、体何だったのか。

スマートフォンが、ポケットので激しく振した。 液晶画面を見ると、所属している介護事務所の所の名が表示されていた。

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嫌な予が胸を突く。 通話ボタンを押し、に当てた。

「……もしもし、咲子です」

『咲子さん! あなた今、どこにいるの!?』

受話器の向こうから、所のヒステリックな切り声が鼓膜を刺した。

『神崎医院の先から、今ものすごい剣幕でクレームが入ったわよ! 利用者の個報を勝に持ちして、ありもしない妄で脅迫まがいの尋問をしてきたって! 自治会からも連絡があったわ、くなった清原さんの部で、あなたが審な物をしていたのを見かけたがいるって!』

「所、違います、私は脅迫なんて――」

『言い訳はいいわ! 警察汰にでもなったら、うちの事業所の指定が取り消されるのよ! のシフトは全部別のヘルパーに交代させたから。事態が収拾するまで、あなたには自宅待、無期限の職処分を言い渡します。いいわね、度とあの団づかないで!』

に通話が切られた。

ツーツーという無質な切断音だけが、の奥に残り続ける。

完全に包囲されていた。 神崎医師と自治会。 彼らにとって、の相馬栄造のは、絶対に掘り返してはならない「終わったこと」なのだ。 それを嗅ぎ回る私は、排除すべき異物に過ぎない。

だが、ここで引きがるわけにはいかなかった。 職になろうが、職を失おうが、すでにを踏み入れてしまったのだ。

あの畳の隙の暗に、相馬さんの絶望の叫びが残されていたあの所に。

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