"失踪した妻を道の駅で見つけた――「来ないで」と怯えた理由" 第7話
吉兼産業。
域では定企業としてられていた。
しかし内部資料は違った。
過剰な設備投資。
採算のわない産事業。
関連会社への透な資移。
資繰りは限界にかった。
方だけでは支えきれず、部資本を探した。
そこで私たちのファンドが入った。
理由は単純だった。
本業には価値があった。
物流や品卸など、域に必な事業まで潰す必はない。
経営改善を条件に資を入れれば、再できると判断した。
私は結の実だとっていた。
だからこそ審査から部距を置き、最終段階だけ確認した。
宗郎たちと直接会うことも避けた。
利益相反とわれたくなかったからだ。
それが結果に、彼らが私の正体をらない理由になった。
私は普通の会社員として結と暮らしていた。
スーツも級ブランドではない。
も国産。
豪華なにもまなかった。
必以のを見せることを、結自が嫌っていた。
「誠さんといると、普通でいられる」
何度か、そう言っていた。
今えば。
私は「普通」を守ろうとするあまり、別の力を隠しすぎたのかもしれない。
宗郎たちは、沈黙する私をいとった。
反抗できない。
何もらない。
何をしても耐える。
そうわせてしまった。
ただ。
会社への支援を、で引き揚げるつもりはなかった。
広告
300億円。
その向こうには従業員と取引先がいる。
宗郎への復讐のためだけに、何千もの活を壊すわけにはいかない。
佐々にも話で言った。
「個と会社を分けろ」
「はい」
「刑事事件が経営へ与える響を法務で精査する。必なら経営陣をし、事業を残す方法を取る」
「承しました」
「従業員まで巻き込むな」
「そのつもりです」
以の私なら。
宗郎へのりを抑えるために、ただ耐えたかもしれない。
だが今は違う。
耐えるのではない。
正しい順番で処理する。
罪は警察へ。
会社は契約へ。
結と杏奈は全な所へ。
それぞれを混ぜない。
それが私の仕事でもあった。
やがて。
垣に囲まれた吉兼の敷が見えた。
い。
広い庭。
結婚、初めて訪れた。
私は圧倒された。
今。
同じを見ても何もじなかった。
「杏奈」
「なに?」
「でしだけ、パパがお話する」
「おじいちゃんと?」
「ああ」
「られる?」
娘の言葉に胸が痛んだ。
この子まで、このに来ればられるとっている。
「丈夫」
私は笑った。
「今はパパが話す番だから」
を止めた。
その頃。
敷のにいる2はまだらない。
の駅で結が見つかったことも。
録音が残っていたことも。
自分たちが見してきた男が、これまでとは違う気持ちでをくぐろうとしていることも。
玄関をけたのは、昔から吉兼にいる政婦だった。
広告
杏奈を見ると、柔らかい顔になった。
「杏奈お嬢様。きくなられましたね」
「こんにちは」
「お久しぶりですね」
杏奈は私のをく握った。
廊の奥から武志が来る。
「遅い」
最初の言。
「すみません」
私は以と同じように答えた。
まだ何もらない男を演じる。
「父さんが待ってる」
武志は杏奈へ度目を向けただけだった。
「杏奈は奥へ」
「パパと緒がいい」
娘が私の袖を握る。
私はしゃがんだ。
「しだけ待てる?」
「どれくらい?」
「アイスが溶けるよりい」
杏奈がし笑った。
「本当?」
「ああ」
政婦に連れられ、隣へ入る。
扉が閉じた。
私は応接へ向かった。
宗郎がきな黒革のソファに座っていた。
窓のには入れされた庭。
にはい絨毯。
壁には価そうな絵。
宗郎が言う。
「座れ」
私は向かいへ座った。
武志は父の横。
「今呼んだ理由は分かるな」
「お盆だからでは?」
武志が笑った。
「本気で言ってるのか」
宗郎は葉巻を置いた。
「結が消えて半だ」
私は黙った。
「男と逃げた女をいつまでも待っていても仕方がない」
胸ので、録音の声が蘇る。
《にもを置け》
私は表を変えなかった。
「杏奈は吉兼で引き取る」
宗郎が言う。
「どういうですか」
「そのままのだ」
武志が茶い封筒をした。
テーブルへ置く。
「1000万円」
「何です?」
「切れ」
武志はく笑った。
「おの収なら分すぎるだろ」
宗郎も言う。
「杏奈には、もっとまともな環境が必だ」
「今の活がまともではないと?」
「父親1。収入もしたことはない。