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"追い出された四畳半" 第8話

「……朝くから、何の御用でしょうか」 須藤が、驚くほど滑らかな、障りの良いビジネススマイルを作って玄関へ歩みてきた。 さっきまで私の胸元に警棒を突きつけていた男と同物とはえない、慇懃な態度だった。 彼は内ポケットから、箔の押しが入った黒い名刺入れを取りした。

「私、こちらの桐原莉緒の代理を務めております、同会社ストラテジック・パートナーズ代表の須藤と申します。公社の皆様が、警察の方まで連れてこのような朝に……何か緊急のトラブルでもございましたでしょうか?」

矢代は差しされた名刺を瞥したが、それを受け取ろうとはしなかった。 彼は無表のまま、挟んでいた分いバインダーをいた。

「指導監督課の矢代です。須藤さん、および桐原さん。当公社が管理する本宅において、資格のない第者への法転貸、および虚偽申告による名義変更の申してがわれている疑いがじたため、規約第条に基づき、緊急の居実態調査に参りました」

法転貸……?」 須藤はわざとらしく眉をの字に寄せ、困惑したような乾いた笑いを漏らした。 「ですね。私は桐原の婚約者として、彼女の親族である宇佐美茜さんの活支援、および今の同居に関する法続きを正式にめているだけですよ。

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、窓にも正規の申請式を提させていただいたはずですが」

須藤は居のローテーブルへ戻り、引きしから枚のクリアファイルを取りして掲げた。 そこには、あの公団の受領印が押された『名義承継申請兼退承諾』の写しが挟まれていた。

「これです。宇佐美さんご本の自署名、および印鑑証を添付した実印が押印されております。宇佐美さんは以から体調を崩されており、自した活が困難なため、従姉妹である桐原がこの部を引き継ぎ、私がその扶養をサポートするという形でしております。……ですよね、宇佐美さん?」

須藤の酷な瞳が、値踏みするように私を捉えた。 その奥底に、「余計なことを言えばどうなるか分かっているな」という剥きしの脅迫が宿っている。

さらに、莉緒が居から駆け寄り、涙ぐむような声を作って警官たちのた。

「お巡りさん、信じてください! 茜、昔から精神定なところがあって……母をくしてから、被害妄がひどいんです。昨も、私たちが親切で活費の面倒を見ているのに、『部を乗っ取られる』ってパニックを起こして……だから、私が公団の方に相談して、正規の続きで名義をまとめてあげようとしただけなんです!」

莉緒の瞳から、粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。

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震える肩、怯えたような仕。 何つ事らない第者が見れば、れな親族の善が、狂った同居によって踏みにじられているようにしか見えない、完璧な演技だった。

の警察官が、わずかに顔を見わせる。 全課の若い方の警官が、元のメモ帳を握り直しながら、困惑したように矢代に線を送った。 民事の同居トラブル。 銭と居権を巡る沼の言い争い。 警察がもっとも介入を嫌がる、曖昧でな領域の空気が、玄関先にち込め始めていた。

須藤はそれを見逃さず、畳み掛けるようにく落ち着いた声をした。

「民事の契約がすでに成している段階です。もし宇佐美さんに異議があるのなら、それは庭裁判所を通じて調を申してるべき筋いのものでしょう。警察の方々や公社が、令状もなく個の居で踏み込んでいい理由にはならないはずです。……お引き取り願えますか。所の目もありますので」

完璧な論理武装だった。 形式類。 押された実印。 そして「病な親族の支援」という美名。 本の政と警察を縛る「続きの壁」を、この男は熟していた。

矢代の横に配の警官が、ため息混じりにきかけた。 「……矢代さん、これ以ち入りは、現点では制力を伴う根拠が——」

「いいえ」

私は、乾ききった喉から声をした。 それは決してきな声ではなかったが、暗い廊気のに、く鋭く響いた。

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