"追い出された四畳半" 第7話
「え!? 茜!? あんた、何で入ってきてんのよ! 法侵入じゃない!」
須藤が歩、私へといを詰めた。 警棒の先端が、私の胸元に突きつけられる。 「携帯をせ。叩き壊すに、寄こせ」
逃げはなかった。 背は台所の狭い流し台。 には体格のいい男と、ヒステリックに叫ぶ女。
だが、私の線は、壁に掛けられた古い振り子計に向けられていた。
午分。
「携帯を渡せって言ってんだろ!」 須藤が鳴り、腕を振りげたその瞬——。
ピンポーン。
静寂を切り裂くように、澄んだインターホンの子音が、狭い公団の部に鳴り響いた。
須藤のきが、ピタリと止まった。 莉緒が怯えたように顔を見わせる。 「……誰? こんな朝くに……」
インターホンは、度では終わらなかった。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。
執拗に、規則正しく打ち鳴らされる音。 そして、それに続くように、い鉄の扉が側から激しく叩かれた。
ドンドン、ドンドン!
「宅供公社監察課です! 警察官同伴のち入り調査です! けなさい!」
号のような男の声が、朝の静まり返った廊に轟いた。
須藤の顔から、さっと血の気が引いた。 莉緒は目を見き、をパクパクと魚のように閉させている。
私は、胸元に突きつけられた警棒を、え切った自分ので静かに押しげた。 そして、青ざめたの顔をまっすぐに見つめ、こので初めて、の底からたい微笑みを浮かべた。
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「けてあげたら? あなたたちの、しい活の始まりよ」
い鉄製の玄関扉の側から、もう度、をつんざくような激しいノックが響いた。
ドンドン、ドンドン!
「区管轄、京都宅供公社指導監督課の矢代です! 千警察署活全課の警察官が同しています! 宇佐美茜さん、桐原莉緒さん、速やかに扉してください!」
号のような男の声が、廊のえ切ったコンクリートに反響する。 狭いDKの台所に、んだような静寂が落ちた。
須藤の腕が、空でぴたりと凍りついている。 黒い特殊警棒を握りしめた彼のの甲に、青い血管が浮きがっていた。 先ほどまで獲物をいたぶるように歪んでいた唇から、血の気が完全に引いている。
「……おい、莉緒」 須藤は警棒をゆっくりとろし、声のトーンを自然なほどく落とした。 「てめえ、役所に垂れ込んだのか」
「ち、違う! 私じゃない、私そんなことするわけないじゃん!」 莉緒は素のままたいフローリングにちすくみ、派なジェルネイルを施した両で元を押さえていた。 その線が、刻みに震えながら私へと向けられる。 「茜……あんた、何したの? ねえ、何呼んだのよ!?」
私は答えなかった。 ただ、台所の流し台の縁を掴んでいた指先を静かにし、玄関へ向かって歩、を踏みした。
「待てよ」
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須藤の太い指が、私の作業着の肩を背から乱暴に掴んだ。 が引きちぎれそうなほどく締めげられる。 元に、タバコの饐えた匂いと、温かい呼気が吹きつけられた。
「余計な真似してみろ。ただじゃ置かねえぞ。……莉緒、警棒隠せ。あとテーブルのの類、全部ケースに突っ込め」
須藤は私を突き放すようにしてすと、ネイビーのスーツの乱れた襟元をくえた。 莉緒は青ざめた顔で、テーブルのに散らばっていた架空法の登記簿や名簿の束を、ジュラルミンケースのへ狂ったように押し込んでいる。
チャイムが、度、執拗に鳴り響いた。
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
「けます」 私は掠れた声でに向かって告げ、ドアスコープの横にあるいドアガードをした。 たい鉄のハンドルを押しげる。
ガタツ、と錆びついたラッチがれ、の湿ったの匂いと、凛とした朝の気が気に内に流れ込んできた。
暗い廊にっていたのはだった。 昨、窓で対応した指導監督課の矢代監察官。 その両脇には、紺の羽を羽織った、千警察署の制警官が。 胸元には無線と、黒の腕章がっている。
「宇佐美茜さんですね」 矢代は私の顔を確認すると、鋭い線を内へと滑らせた。 その線が、トランクスのに急ぎスーツの着だけを羽織った須藤と、居の隅で縮こまっている莉緒を捉える。