"十年介護と九千万円" 第18話
「ジギタリス系配糖体、および過剰投与用の圧剤。これを毎、しずつ私にませていた。曜の朝から量を倍にして、曜の今、私が全でぬはずになっていた。そうですね? 迫さん」
迫の喉仏がに激しくいた。声がない。 麻美が審そうに男の袖を引っ張った。 「ねえ、健ちゃん、何なのこれ? 毒ってどういうこと? くお受け取って信くんでしょ!?」
「黙れ!」 男が鳴り声をげた。
男の顔から嘲笑が消えっていた。 獲物を狙う肉獣のような、獰猛な殺気がその瞳に宿る。 男はゆっくりとちがると、着のポケットにを突っ込み、座卓を蹴りばした。
ガシャアン!
湯呑みが畳に落ち、たい麦茶が広がった。 男のには、刃渡りセンチほどの折りたたみ式の登ナイフが握られていた。
カチ、と刃が固定されるたい属音が響く。
「……嗅ぎ回ったのか、あのボケ刑事にでも泣きついたか」 男の声が、底から響くようにくなった。
「枝、てめえが余計な真似をしなきゃ、楽に眠らせてやるつもりだったんだよ。だがな、ここでてめえを刺し殺して、事故に見せかけてを放てば同じことだ。迫、玄関に鍵をかけろ!」
「ひっ……!」 麻美が鳴をげ、ずさりして壁に背を打ちつけた。
迫が青ざめた顔でドアへ向かおうとした、その瞬だった。
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ドアン!
凄まじい衝撃音と共に、402号の鉄扉が内側へ弾けんだ。
「くなッ! 警察だ!」
轟音と共に踏み込んできたのは、防刃ベストを着込み、拳銃を構えたの男たちだった。 先につのは、茶のトレンチコートを着た初老の男——神保だった。 そのろから、腕章を巻いた県警捜査課と監察官の刑事たちが、涛の勢いで崩れ込んでくる。
「銃を捨てろ! に伏せろ!」
狭い畳半に、号が充満した。 男は瞬、ナイフを構えて威嚇しようとしたが、の屈な刑事が男の腕を壁に叩きつけ、の速さでねじ伏せた。
ガキッ、と鈍い音がしてナイフが畳に転がる。 男の背に膝がめり込み、たい錠が肉にい込んだ。
「せ! 俺は元警察官の健だぞ! 遺症の残る障害者だ! おら、何を根拠にこんな真似をしやがる!」
に顔を押し付けられた男が、唾をばしながら喚き散らした。
神保が静かに歩み寄り、男の真横にしゃがみ込んだ。 神保のには、型のポータブル指紋照が握られていた。
「健だと? よくもまあ、もその汚い面で同期の名を騙り続けてくれたな」
神保は男のを引に掴み、差し指をセンサーに押し当てた。 ピピピッ、とい子音が鳴り、モニターに赤の文字が点滅する。
【照致:森田 宏(61)】 【指定第104号:茨県質主盗殺・拳銃奪事件被疑者】
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「……森田……宏……?」 麻美の甲い声が、裏返って響いた。
「嘘……健ちゃん、元警察官の英雄だって……だから付きってあげたのに……! 殺犯……?」
「お嬢さん、あんたも終わりだよ」 神保のろに控えていた刑事が、麻美のにちふさがった。 「森田から受け取っていた現、ブランド品、そしてあんたの画廊の座に振り込まれていた資は、すべて警察基からの横領と、指名配犯の逃資だ。犯蔵匿および組織犯罪処罰法違反の容疑で、署までご同願おう」
「嘘よ! 私は何もらなかった! 騙されてたのよ! この男が持ちだって言ったから!」 麻美はヒールを脱ぎ散らかし、にへたり込んで泣き叫んだ。 さっきまで私を見し、両親の写真を踏みにじっていた女の、あまりにれで浅ましい末だった。
方、玄関脇に追い詰められていた迫は、額から滝のような汗を流しながら、必にを振っていた。
「じ、神保君! 誤解だ! 私はらなかったんだ! 健が偽者だったなんて……私もこの男に脅されて、やむを得ず……!」
「見苦しいぞ、迫」
神保がちがり、酷な目で元司を見ろした。 彼はポケットから、冊の分いファイルを取りし、迫の胸元へ叩きつけた。
「あんたが、森田と折半して私腹を肥やしていた裏座の全記録だ。警友会の公印を勝に偽造し、健の殉職付を横領していた証拠も、昨夜の宅捜索ですべて押さえた。