みかん小説
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"十年介護と九千万円" 第12話

これで、つ目の退を断った。 奴らは曜の昼、偽造した実印を持って庫へ駆け込んでも、円の融資も引きすことはできない。

だが、それは同に、追い詰められた獣を檻のに閉じ込めることをしていた。 に入らないとった瞬、森田と迫は、私を「終わらせる」ためにを剥く。 私に残された猶予は、実質に今夜とだけだった。

過ぎ。 い鉛のような疲労を引きずりながら、私は公団の敷へと戻ってきた。

の曇から、細かなみぞれがり始めていた。 築の団は、巨なコンクリートの墓標のようにたく沈んでいる。 402号へ続く階段を見げた、私のが止まった。

踊り暗がりのに、があった。

迫ではない。 仕ての古びた茶のトレンチコートを着た、髪交じりの初老の男だった。 背筋が異様なほど真っ直ぐに伸びている。 男はすりに寄りかかり、傘も差さずに、じっと402号の鉄扉を見つめていた。

私が階段をがっていく音に気づくと、男はゆっくりと振り返った。

く刻まれた目尻の皺。 だが、その奥にあるは、剃刀のように鋭利だった。

「……枝さんですね」

く、掠れた、だがよく通る声だった。 私は提げバッグの持ちを無識にく握り直した。

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「どちら様でしょうか。兄の……迫さんのいの方ですか?」

迫の名をした瞬、男の眉がわずかにいた。 男はコートの内ポケットにを入れ、黒い革の警察帳……ではなく、枚の名刺を取りした。

差しされた名刺には、シンプルな活字が並んでいた。

【神保調査事務所 代表 神保正治】 【元・千葉県警察本部刑事部捜査課】

「神保……?」 私の記憶の片隅で、古い埃をかぶった引きしがくような覚があった。

「覚えがありませんか。、健が葛飾署の域課に配属された、私は本部の捜査課で特捜に入っていた。健とは、警察学の同期ですよ」

臓がねた。 兄の、本物のの、同期。

迫の差しではありません」 神保と名乗る男は、私の警戒を察したように、声をく落とした。 「し、所を変えませんか。あの部の『健』に聞かれるわけにはいかない」

神保は顎で、階段の踊りのさらに奥、塔へと続くへの非常階段を指した。 吹きさらしの踊りたいみぞれが容赦なく吹き込んでくる。 だが、ここなら公団のどの部からも角になり、声が漏れる配はなかった。

神保はコートの襟をて、ポケットから古びたセブンスターを取りしてをつけた。 煙が、気にく溶けていく。

「単刀直入に言います」

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神保は煙を指に挟んだまま、私の目を真っ直ぐに見据えた。

「あの部にいる男は、じゃない。そうですね?」

コンクリートのが、元から崩れ落ちるような衝撃だった。 私は息を呑み、言葉を失った。 この男は、っている。 迫の息のかかった者ではなく、側からこの歪な怪異を嗅ぎつけていたのだ。

「……どうして、それを」

ですよ」 神保は苦い笑みを浮かべ、煙を吐きした。 「里の岸で、健が崖から落ちて炎した。焼け焦げた遺体が見つかり、現には健の警察帳が落ちていた。本部は事故、あるいは職務の過労による自殺として処理しようとした。だが、遺体の蓋骨には、転落に鈍器で殴られた骨折痕があったんだ」

あの内部通報と同じ内容だった。

「私は当の質主射殺事件で指名配されていた森田宏を追っていた」 神保の声が、氷のように研ぎ澄まされていく。 「森田の取りは、里の現からわずかキロの点で途絶えていた。私は直したよ。森田は健を襲って分を奪い、健代わりに仕てて焼き殺したんだとな。だが——」

神保の指が、く煙を揉み消した。

「捜査本部は突然、解散させられた。指揮を執っていたのが、当、県警本部の警務部で絶な権力を持っていた迫だ。

迫は遺体のDNA鑑定を『損傷が激しすぎる』という理由で握り潰し、わずか数週、管内の別の病院から『記憶と言語を失ったが奇跡に保護された』と発表した。

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