"十年介護と九千万円" 第11話
に過ぎなかったという事実に、魂が震えるほどのりが込みげていた。
「……殺されてたまるか」
掠れた声が、私のから漏れた。
私は流し台のから、使い古した空のポリエチレン製ドレッシング容器を取りした。 湯で洗い、気を拭き取る。 そして、ピッチャーのの麦茶を、滴もこぼさぬよう慎に容器へと注ぎ入れた。 蓋を固く締め、それを聞でに包み、自分の提げバッグの奥くに押し込む。
残ったピッチャーの麦茶は、全て排へと静かに流した。 茶い液体が渦を巻いて消えていく。 私は蛇をひねり、しいを入れて麦茶のパックを放り込んだ。 見た目だけは、昨までと寸分違わぬ麦茶を作り直す。
ベランダへ戻り、あの油まみれの苔の缶を慎に排気の奥へと押し戻した。 アルミテープの皺を丁寧に伸ばし、指紋を拭き取る。 字キーをポケットの奥へ沈め、私は静かに部へ戻った。
襖の隙から覗く男は、依然としてい鼾をてて眠りこけていた。 布団から突きたその無骨な先。 を撲殺し、警察から拳銃を奪い、もの皮を被ってき延びてきた悪魔の肉体。
私は男を見ろしたまま、たい笑みを浮かべた。
おたちのい通りにはさせない。 ぬのは私ではない。 獄へ堕ちるのは、おたちだ。
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*
曜の午。 公団の敷をた私は、最寄りの私鉄駅へと急いだ。
曜の昼まで、あとしかない。 迫が司法士を連れて再び乗り込んでくるに、まず奴らの狙いである「茨の」を完全に凍結しなければならない。
を乗り継ぎ、私が向かったのは、県庁所にある方法務局の本局だった。 曜のため通常の登記窓は閉ざされていたが、私は通用から警備へ向かい、事に話で確認していた当直の法務事務官を呼びした。
え切った相談のパイプ子。 現れた初老の登記官は、私が差しした類の束を見て、怪訝そうに眉を寄せた。
「……さん。正登記防止申、ですか?」
「はい」 私は擦り切れたバッグから、両親の除籍謄本、兄と私の戸籍謄本、そして古い権利の原本を並べた。
「現、私の実兄である健の名義を騙り、第者が勝に実印を偽造し、茨県内の実産に抵当権を設定しようとしています。すでに事審査の類がいている形跡があります。本の確認のない切の所権移転および抵当権設定登記を、法に止してください」
登記官は分い鏡の奥から、厳しい線を私に向けた。
「申しの趣旨は分かりますがね、さん。この制度は、あくまで登記申請があった際に本へ通を送るためのもので、申請そのものを完全にブロックする制力はありませんよ。
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それに、お兄様が度の障害をお持ちなら、成見の選任申てを庭裁判所にうのが筋です」
「それでは曜ににわないんです!」 私はを乗りし、机に両を叩きつけた。 ひび割れた指先から、微かに血が滲む。
「曜の昼、偽造された類で最終決済がわれようとしています! もし登記が通ってしまったら、善の第者に転売されたでは取り返しがつきません! お願いです、登記事項証に『所権更正および処分禁止の保全異議』の仮受付だけでも記録してください!」
私の異様な剣幕に、登記官は息を呑んだ。 その濁りのない、狂気じみた必さが、ただの親族の揉め事ではないことを察したのだろう。 彼は数分、端末の画面と私の差しした権利を交互に見つめ、やがていため息を吐いた。
「……わかりました。週け曜の午半、窓がいた瞬に、本局から管轄の張所へ『厳審査対象物件』としての警告フラグをオンラインで送致する続きを取りましょう。曜の朝番に、もう度正式な申を窓にしてください。それで、登記官の職権による現確認が入るまで、続きは確実にストップします」
「……ありがとうございます」
私はく、くをげた。 机のたい板に額を擦り付けながら、私は拳をく握りしめた。