"十年介護と九千万円" 第10話
見しの活字が、私の網膜を焼き焦がすようにび込んできた。
【茨・質主射殺事件 依然逃の元員・森田宏(当41)か】 【奪われた拳銃と逃経 県警、特別捜査本部を設置】
記事の央に印刷された、粗い黒の顔写真。 配写真特の、正面を見据える凶悪な相。 頬骨がく、の眉のに、さく引き攣れた傷跡がある。
私は反射に、け放たれた襖の向こう、ベッドので眠る男の横顔を見た。
男の眉の。 い皮膚のに隠された、あのさな引き攣れ。 たぶの切れ込み。 骨太の顎。
写真の指名配犯——森田宏の顔と、 、私が「お兄ちゃん」と呼び、体を拭き、飯をわせてきた男の顔が、 ので、寸分の狂いもなく完全になりった。
「……森田……宏……」
声にならぬ呟きが、私の喉から漏れた。
この男は、兄の健ではない。 、盗殺を犯し、警官から拳銃を奪って逃していた凶悪犯——森田宏だ。
そして、本物の兄・健は、この男に殺され、ごと崖に落とされて焼かれたのだ。 迫は、逃犯である森田と結託し、んだ兄の代わりとして森田を公団に匿い、、国からの付と私の労働力を貪りってきたのだ。
ピピッ。
元のガラケーが、突然子音を鳴らした。
画面が点滅し、着メールのポップアップが表示される。
広告
送信者は『O』——迫だった。
かれた画面に表示された文字を読んだ瞬、 私の全の血液が、滴残らず凍りついた。
『健、例の薬は毎しっかりませているだろうな。 曜の昼、枝が印鑑をさなければ、曜を待たずに終わらせる。 全の診断は、警友会の息がかかった監察医に配済みだ。 あの愚図をこれ以かしておいても、邪魔になるだけだ』
青くる液晶画面の文字が、私の球の奥へ針のように突き刺さっていた。
『健、例の薬は毎しっかりませているだろうな。 曜の昼、枝が印鑑をさなければ、曜を待たずに終わらせる。 全の診断は、警友会の息がかかった監察医に配済みだ。 あの愚図をこれ以かしておいても、邪魔になるだけだ』
息ができなかった。
指先から体温が急速に奪われ、にしたガラケーがカタカタと乾いた音をてて震えた。 私は奥歯を砕けんばかりに噛み締め、その震えを無理やりねじ伏せた。
例の薬。 全。 邪魔になるだけだ。
ので、断片な記憶が恐ろしい速度で本の線に繋がっていく。
ここヶほど、朝起きると決まって胸の奥が鉛のようにかった。 階段をがるだけで激しい悸がし、や汗が止まらなくなることが何度もあった。 の先が氷のようにえ、夜に自分の脈の音でね起きることもあった。
広告
私はそれを、ただの「を過ぎた体の衰え」だとい込んでいた。 の過酷な介護、眠、粗末な事のせいだと。
違った。 衰えなどではなかった。
私はゆっくりと顔をげ、台所の流し台の脇に目を向けた。
そこには、私が毎沸かしてましている、リットルのプラスチック製ピッチャーが置かれていた。 に入っているのは、業務スーパーで番い徳用煮し麦茶。 私が毎、喉を潤すためににし、男の部へ持っていくためにも使っていた、あの茶い液体。
あの男——森田宏は、私が台所をれた隙に、あるいは私が眠りについた夜に、このピッチャーへ何かを混ぜていたのだ。 しずつ、確実に、私の臓を止めるための毒を。
私が過労で突然すれば、何つ自然な点はない。 「も寝たきりの兄をで病し続け、労で力尽きた健気な妹」。 周囲は同の涙を流し、迫は眉をの字にして「よく頑張った」と私を悼むだろう。 そして、寄りを失った「英雄の兄」の見として、迫と森田は茨のを堂々と売り払い、数千万円のを分けにする。
完璧な、完全犯罪の筋きだった。
胃袋が雑巾のように絞られ、私は流し台にを突いて胃液を吐きした。 酸っぱい液体が喉を焼き、涙がボロボロと溢れ落ちる。
悔しいのではない。
しいのでもない。 この、私が踏み躙られてきたすべての、すべてのが、奴らにとって単なる「使い捨ての殺害装置」