"息子に捨てられた母の逆転" 第3話
さやかだ。
はる子は壁際にったままを澄ませた。
「まだ環境に慣れていないご様子です。しもおありかと……はい、分かりました。何か変化がありましたらご連絡します」
配しているだけなら、おかしくはない。
それでも、はる子には「変化」という言葉が引っかかった。
午になると、今度はさな封筒が届けられた。
差はさやか。
にはい錠剤が入った袋と、枚のメモがあった。
《お母さん、忘れずにんでくださいね。朝と夜です》
「これ、何の薬ですか?」
はる子は持ってきた職員へ尋ねた。
「ご族から、いつもんでいるものだと伺っています」
「私はこんな薬、りません」
職員の表が止まった。
「そうなんですか?」
「病院でもらった薬じゃありません」
女性は度ナースステーションへ戻り、別の職員と何か相談した。しばらくして戻ってくると、「確認が取れるまでこちらでお預かりします」と言った。
はる子はしだけした。
だが同に、背がたくなった。
自宅でも、さやかは似たようない錠剤を何度か持ってきたことがあった。
「記憶力にいい栄養剤」
そう説されていた。
当から妙だとはっていた。
夕方、301号にしい入居者が来た。
70代半ばくらいの女性で、職員に支えられながら隣のベッドへ腰をろした。目の周りが赤く腫れている。
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「こんにちは」
はる子が声をかけると、女性はさくをげた。
「こんにちは」
それだけ言うと、壁の方を向いて横になってしまった。
夜になって照を消したあと、隣からさなすすり泣きが聞こえた。
「戻ってくるって言ったのに……」
はる子は目をけた。
「息子、戻ってくるって言ったのに……昨から話もないのよ」
布団ので、女性が泣いている。
はる子は声をかけようとしたが、言葉がなかった。
自分と同じだった。
数だけ。
また来る。
すぐ迎えに来る。
そう言って族は帰っていった。
翌の午、さやかが面会に来た。
果物の籠を持ち、何事もなかったように微笑んでいる。
「お母さん、しは慣れました?」
「携帯を返して」
「なくしたら困るでしょう?」
「自分で管理できます」
「その話はあとでしましょう」
さやかは子を引き寄せた。
そして突然、質問を始めた。
「今の付、分かりますか?」
はる子は眉を寄せた。
「1228」
「今んでいるの所は?」
「杉並区の——」
最まで言うに、さやかが次の質問をした。
「通帳はどこに置いていますか?」
はる子は黙った。
「何?」
「通帳です。最、お母さん自分で管理してましたよね」
「そうだけど」
「実印は?」
はる子の胸に、細い針を刺されたような覚がった。
「どうしてそんなことを聞くの?」
さやかは笑った。
「ちゃんと覚えているか確認しているだけですよ」
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「私の記憶力を?」
「配してるんです」
「昨、本に何も説せず介護ホームへ置いていったが?」
瞬、さやかの顔から笑みが消えた。
しかしすぐ戻った。
「お母さん、興奮しないでください」
その言葉に、はる子は黙った。
面会を終えたさやかは、帰り際にナースステーションへ寄った。
はる子は部の扉をしだけけ、廊の向こうを見た。
「もし母がりっぽくなったり、急にへようとしたり、話がおかしくなったりしたら、細かく記録してください」
さやかの声が聞こえた。
「診察のに必になりますから」
職員が頷いた。
はる子は静かに扉を閉めた。
ようやく理解した。
自分がれば、「が定」。
帰りたいと言えば、「状況が理解できていない」。
通帳を返せと言えば、「銭管理への執着」。
どんな言葉を発しても、さやかに都のいい記録へ変えられる能性がある。
はる子はベッドへ座った。
これから必なのは、正しさを声で訴えることではない。
証拠だった。
そして、相に自分が気づいていると悟られないことだった。
「分かったわ」
声にさず、胸ので言った。
望む老を演じてあげる。
その代わり。
あなたたちが何をしようとしているのか、最まで見届ける。
翌朝、はる子は洗面台ので顔を洗った。
部へ戻り、子に掛けてあった黒いダウンジャケットを持ちげる。
昨夜し寒かったので羽織っていたものだった。
何気なく内ポケットへを入れた、指先にいものが触れた。