"空っぽの弁当箱" 第8話
困っただけ母さんを呼ぶなら、何も変わってないから」
美も頷いた。
「のことは4でやっています。分からないことがあっても、まず自分たちで考えます」
はる子は2を見た。
「そう」
「謝って許してもらったら戻ってきてもらえる、ってってました」
美は涙を拭った。
「でも、それも私たちの都ですよね」
「そうね」
はる子は静かに答えた。
「あなたたちが変わることと、私が戻ることは別の話よ」
2は何も言わなかった。
「謝ってくれたことは受け取ります。でも私は戻りません」
はる子は、今度ははっきり言った。
「3、私はみんなの好きな物、嫌いな物、学の予定、仕事の予定ばかり考えていた。これからは、自分がどう暮らしたいのかを考えてみたい」
健はゆっくり顔をげた。
「分かった」
度息を吸った。
「母さんが選んだ暮らしを、俺たちの都で変えない」
そしてしを置いた。
「でも……たまに会いに来てもいいか?」
はる子はすぐには答えなかった。
以なら、息子にそう言われただけで胸がいっぱいになったかもしれない。
今は違った。
「会うことまで否定したいわけじゃないわ」
健の肩からし力が抜けた。
「ただ、次に会うは私に何かを頼むためじゃなく、お互いのことをるために会いましょう」
「うん」
「陸と芽にも伝えて。私がって消えたんじゃないって」
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「分かった」
「私は、自分の活を選んだだけだから」
そのの帰り。
健と美は、産を渡して許してもらうことも、孫の顔を見せて気持ちを変えさせることもしなかった。
ただ、自分たちの言葉を置いて帰った。
はる子も、2を許したから昔のへ戻るという選択はしなかった。
謝罪を受け取ることと、自分のを返すことは違う。
58歳にして、はる子は初めてその違いを自分の言葉で言えた。
期滞型宅の期限がづく頃、はる子はく暮らせる部を探し始めた。
条件はくない。
清掃パートへ通いやすい。
病院へきやすい。
膝に負担のない1階。
そして、自分で鍵をかけて眠れる部。
いくつか見たで、駅から徒歩12分の古いアパートが気に入った。
築数は経っていたが、窓がきかった。
午のが畳へ差し込む。
「ここにします」
はる子は自分で決めた。
引っ越しの、持ち込んだ物はくなかった。
い卓。
夫の写真。
いカップ。
さな箪笥。
そして、自分で選んだのカーテン。
窓へ取り付けると、部の雰囲気が柔らかくなった。
「いいね」
はる子は1で笑った。
夫と暮らしていたも、息子のでも、カーテンのを自分だけで選んだことはなかった。
翌朝。
6半に目を覚ました。
以なら4つの弁当を詰め終えているだ。
はる子はゆっくり湯を沸かし、いカップへコーヒーを注いだ。
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「おはよう」
夫の写真へ声をかける。
パンを焼き、卵をつだけ割った。
自分のための卵焼き。
べて首を傾げる。
「ちょっと甘すぎた」
文句を言うはいない。
次のは砂糖を減らせばいい。
それだけだった。
はる子は、先延ばしにしていた膝の診察も始めた。
清掃パートで追加勤務を頼まれた、以なら病院をキャンセルしていた。
今は違った。
「そのは通院なので、お休みをお願いします」
自分の体のためにを使う。
それだけのことを、しずつ覚えていった。
図館の掲示板で、午だけの補助スタッフ募集を見つけたのもその頃だった。
本の返却。
棚の理。
簡単な案内。
膝への負担は、清掃よりない。
面接で勤務希望を聞かれた。
以なら、
「必ならいつでも」
と答えていただろう。
だがはる子は帳をいた。
「通院を続けたいので、週3の午を希望します」
には清掃パートを辞め、所のさな図館で働き始めた。
ある、館が棚ので言った。
「佐々さん、ここの並び、すごく見やすくなりました。ありがとうございます」
はる子は瞬、返事が遅れた。
では何かをえても、「ありがとう」の次には別の頼み事が来ることがかった。
「こちらこそ、ありがとうございます」
そう答えると、胸の奥がし温かくなった。
初めて図館の料を受け取った。
必なおを分けたあと、はる子はさな封筒を用した。