"名前を消された入園届" 第23話
枚目。 『かつや 全力ご飯! カツ丼百円引きクーポン』。
枚目。 百円ショップの学ノートから破り取られた、完全にの横罫線が枚。
静寂が、部のを支配した。
カチ、カチ、カチ。 壁に掛けられた百円ショップの計の秒針の音だけが、異様なきさで響いていた。
職員のが止まった。 鏡の奥の目が、机ののチラシと、康平の顔を交互に見つめた。
「……横瀬さん。これは、何ですか?」
「……え?」
康平のから、抜けな声が漏れた。 彼はのめりになり、机ののを凝した。
「は……? な、なんだこれ……? 帳は……? 内定通は……!?」
康平のが狂ったように封筒を掴み、逆さにして激しく振った。 バサバサと音をてるが、落ちてくるのはさな屑だけだった。
「嘘だろ……!? さっき、表が見えたはずだろ!!」
「表なら、これのことか」
父が、静かに歩にた。 父の指先から、ひらりと枚のが落ちた。 それは、古びた母子帳の「カバーのコピー」だった。父が昨夜、コンビニで黒コピーし、チラシの番にねておいた片だった。
「お、親父……てめえ……!!」
「印鑑も確認しろ」
父の声は、氷のようにたかった。
康平は震えるで、机のの黒い印鑑ケースにびついた。 蓋をけ、にあった印鑑を引っ張りす。 朱肉の台座にく押し付け、元にあったのノートの切れ端に、狂ったように叩きつけた。
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バンッ!!
のに残ったのは、かすれた赤い円だった。
直径ミリ。 械彫りの、細くっぽいフォントで刻まれた文字。
『横瀬』
「……文判ですね」
女性職員が、徹な声で宣告した。
「役所に登録されている横瀬様の実印は、ミリの正方形にい変形印です。印がまったく致しません」
「な……なんで……」
康平の膝から、力が抜けた。 ドサリ、と座布団のに尻餅をつく。 彼の額から、滝のように脂汗が噴きしてきた。
「さん!! あんた、何細してんのよ!!」
志織がヒステリックに叫び、私に掴みかかろうとした。 だが、そのに監察課の男性職員がちはだかった。
「かないでください、志織さん」
男性職員の声は、内の空気を瞬で凍りつかせた。
「私たちは本、保育課の現況調査だけでなく、あなたに対する『児童扶養当の正受に関する実検査』のために参りました」
志織の顔が、瞬で真っ青になった。 抱いていた蓮斗が、母親の異変を察して「ママー」と泣き始めたが、志織は子供をあやす余裕すら失っていた。
「な、なんのことですか……!? 私、ちゃんと母子庭で……!」
「あなたの夫である男性から、すでに事聴取を終えています」
男性職員は、鞄から分いファイルを取りし、机のに広げた。
「あなたは婚も、夫の座から毎万円の『活費』を、養育費とは別の名目で現渡しで受け取っていましたね。
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さらに、夫が契約している別のマンションに、週の半分以滞していたことも確認されています。計同関係の継続です」
志織の唇が、ガタガタと震え始めた。
「児童扶養当法第条に基づき、当の全額返還を命じます。過に遡り、返還請求額は概算で百万円になります」
「ひゃ……百万……!?」
志織の喉から、空気の抜けたような鳴が漏れた。
「払えるわけないでしょ!! そんなお、もう使っちゃったわよ!! お兄ちゃん、何とかしてよ!! お兄ちゃんが何とかするって言ったから、私、ここに民票移したんじゃない!!」
志織が康平の肩を激しく揺さぶった。 だが、康平はもはや妹の声すら聞こえていないようだった。 に散らばった特売チラシを見つめたまま、虚ろな目でカタカタと顎を震わせていた。
「それから、横瀬康平さん」
父が、作業ジャンパーの胸元から、もう束の類を取りした。 埼玉県宅供公社の印章が押された、分い契約類だった。
「おがこの部の民票をいじくり回して、妹を同居に入れようとしとったのはっとる。だがな、この県営宅の正規の賃貸借契約名義は、最初から俺だ」
父の言葉に、康平がビクッと肩をねげた。
「おはただの、同居承認を受けた親族に過ぎん。そして公社の管理規定第条において、契約名義の承諾のない第者の転貸、ならびに無断同居は、即の『賃貸借契約解除事由』に該当する」