"名前を消された入園届" 第21話
父が壁の向こう、幹線の方向を顎で指した。
「計を見ろ。分だ。役所の現況調査は。くぞ、。おの本物の居所を、取り返しにくんだ」
父の言葉は、私の背骨の奥に本の鋼鉄の芯を通したようだった。 私はぬぐいで陽菜の涙を拭き、抱っこ紐のバックルをく締め直した。 もう、震えは止まっていた。 恐怖も、絶望も、たい朝の空気のに溶けて消えっていた。
私のにあるのは、ただひとつ。 私と陽菜のを踏みにじろうとしたあの者たちに、逃れようのない現実の鉄槌を叩きつけるという、徹な志だけだった。
軽トラックの助席に乗り込むと、父は慣れたつきでチョークを引き、エンジンを始させた。 ガタガタと体が激しく震え、排気音が宅にく響き渡る。
「お父さん、役所のには……」
「るに、公衆話から保育支援課の直通に本入れた」
父はバックミラーを確認しながら、ハンドルを切った。
「曜の夜の当直誌と、昨の曜にした『受理申』の件だ。調査員が号棟に入るに、俺たちと流する筈になっとる。福祉監察課の課補佐も同するそうだ。志織の正受の内偵を担当しとる男だ」
軽トラは、朝の通勤ラッシュで混雑し始めた国号線を、へと向かって滑りした。
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フロントガラスの向こう、鉛のの切れから、く鈍いの差しが漏れ始めていた。 窓を流れる、見慣れた郊の景。 ロードサイドのファミレス、パチンコ、古販売のち並ぶ無質なバイパス。 そのすべてが、私たちがこれまで必にしがみついてきた、取り数万の、ギリギリの活の台だった。
その台ので、彼らはのを引っ張り、嘘をね、破滅から逃れようと掻いていた。 だが、そのっぽい芝居の幕は、あと数分で、永にろされることになる。
午分。 みずほ台の県営団。 褪せたベージュの号棟のに、父の軽トラックが静かに滑り込んだ。
をりると、たいが団の棟と棟のを吹き抜けていった。 見げると、階の〇号のベランダには、志織の息子のものとわれる派なキャラクターもののバスタオルが、だらしなく干されていた。
階段の入り付に、見覚えのない台の軽自がまっていた。 埼玉の公用を示す、青いマグネットシートがドアに貼られたいアルト。 その脇に、の物がっていた。
は、鏡をかけた初老の女性。陽菜が通うはずの、公認保育園の園だった。 もうは、黒いビジネスバッグを持った代の女性職員。
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保育支援課の窓で、私が何度も面談を受けた担当者だった。 そして最のは、のコートを着た、鋭い目つきの代の男性。胸元には『さいたま社会福祉事務所・監察課』の分証がぶらがっていた。
「横瀬さんですね」
監察課の男性が歩にて、さく会釈した。
「お父様からご連絡をいただきました。……お怪はありませんか」
男性の線が、私の破れたストッキングと、のついたコートの裾に向けられた。
「丈夫です」
私ははっきりと答えた。
「夫の横瀬康平は、すでに部におります。私が持っていた類を力づくで奪い、先ほど部へ戻ったはずです」
「状況は把握しています」
保育支援課の女性職員が、元のタブレット端末の画面を見せながら言った。
「今朝分の庁と同に、ご主から窓へ話が入りました。『妻の実印と原本を回収した。妻は育児放棄で逃したため、予定通り現況調査をい、同居の妹を養育者として認定してほしい』との連絡でした」
職員の声は極めて事務だったが、その瞳の奥には、虚偽の報告を繰り返す者に対するたいりが宿っていた。
「へきましょう」
監察課の男性が言った。
「すべての事実を、そので確認します」
私たちは、エレベーターのない暗い階段をがっていった。
段、段、コンクリートを踏みしめる音が、静まり返った階段にく反響する。 私の胸ので、陽菜はもう泣いていなかった。 私のセーターをさな指で掴んだまま、静かにを見つめていた。