みかん小説
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"名前を消された入園届" 第11話

そこに、同じくひとり親の妹が『相互扶助』という名目で転がり込み、世帯をさせる。そうすりゃ、保育園の利用調指数は最ランクにがる。陽菜の内定枠をそのまま蓮斗に付け替えることも、自治体の特例措置を使えば能じゃねえ」

「そんな……そんな鱈目が、通るわけない……!」

「通るんだよ、類のだけならな」

父はたく言い放った。

「役所のは、庭の内なんぞ見ちゃいねえ。窓てきた類のハンコと、民票の記載だけを見てに処理する。妻が育児ノイローゼで失踪し、連絡が取れんという夫の申があり、そこに妻の実印が押してありゃあ、役所は疑わん。おが反論せん限り、あいつらの嘘がそのまま『公な真実』になるんだ」

だから、今だったのだ。 だから、の夕方、私が反論の本すら掛けられないを選んで、私を力づくで追いしたのだ。

康平にとって、私は妻ですらなかった。 借を隠し、妹の犯罪を揉み消し、自分たちが舟から逃げすための、都のいい「贄」だったのだ。 陽菜のお昼寝布団から、私の縫った名が切り裂かれていた景が蘇る。 あいつらは、私の娘のそのものを、あの部から消しろうとしていたのだ。

そのだった。

ブルルルルッ、ブルルルルッ。

器に繋がれた私のスマートフォンが、まるで発狂したかのように激しく震え始めた。

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暗い部で、液晶画面が青滅を繰り返す。

画面に表示された通の嵐。 メッセージアプリのアイコンのに、赤い数字が瞬で増殖していく。 1、3、7、12――。

送信者は、すべて「横瀬康平」だった。

私は息を殺し、スマートフォンをに取った。 指先が震えて、画面をタップするのを躊躇わせる。

父が無言で、顎をしゃくった。「見ろ」という図だった。 私はを決して、トーク画面をいた。

滝のように流れてきた文字列。 そこには、数、玄関で私をたく見ろしていた男の、見るに堪えない焦燥と狂気がそのまま叩きつけられていた。

『おい』 『ふざけんなよ』 『どこに隠した?』 『陽菜の母子帳、が全部抜かれてるだろ』 『お、引きしの帳に別のノートの挟んでただろ。何考えてんだ?』 『今すぐ本物持って帰ってこい』 『おい、読んだら返信しろよ!』 『母子帳の予防接種のページがないと、曜の申請が通らないんだよ!』 『おのせいで全部狂うんだぞ! 分かってんのか!?』 『志織もってる。お、自分が何したか分かってんの?』 『窃盗罪で警察に突きすぞ。お類を盗んで逃げたって被害届すからな』 『返信しろ! 話にろ! おい!!』

文章の隔が、数秒単位で刻まれている。 文字の端々から、爪を噛み、部を血った目で歩き回っている康平の姿が、鮮に浮かびがってきた。

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私は、たくなった指で画面を見つめ続けた。 かつての私なら、この鳴り散らすようなメッセージを見ただけで、臓がからるほど縮みがり、震える声で『ごめんなさい、すぐ戻ります』と話をかけていただろう。 彼の嫌を鎮めるためなら、どんな理尽な求にもげていた。

けれど、今、私の胸のに広がっていたのは、驚くほどの静寂だった。 りすら通り越した、氷のような軽蔑。

康平は、焦っているのだ。 完璧だったはずの計画。 私を無文で追いし、偽造した類で保育園の枠を奪い、民票をき換えてすべてをに葬るはずだった筋きが、私が隠した「母子帳の数枚の」によって、元から音をてて崩れかけているのだ。

あいつらにとって、陽菜の母子帳は、ただの切れではない。 役所の検診スタンプが押され、予防接種の履歴が几帳面に記録されたそのページこそが、の朝、福祉課の査察をパスするための絶対に必な「通形」だったのだ。

私が画面を見つめたまま固まっていると、メッセージがさらに件、追加された。

曜の朝までに持ってこなかったら、本当におの親父のところにも乗り込むからな。所に恥晒すことになるぞ。くしろ』

脅迫。 自分を優位に見せるための、底の浅いブラフ。

私は、文字入力の欄をタップした。

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