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"名前を消された入園届" 第10話

「はい。実の父親の元にを寄せています。子供に怪はありません」

『承しました。お伺いした内容、誌に正確に記録いたします。の朝分の段階で、当直から福祉事務所および保育支援課の主幹へ、最優先案件として直接渡します。なお、辞退届の原本ですが、すでにの受領箱に入っているため、曜の庁と同に確認が入る筈になります』

「ひとつ、お願いがあります」

私は受話器をく握り直した。

「夫や義妹には、私が話したことを絶対に伝えないでください。の朝まで、辞退届が予定通り受理されるものと、彼らにわせておいてほしいのです」

当直員は瞬、言葉を詰まらせたが、やがてく答えた。

『……解しました。こちらから相方へ能に連絡を入れることは、業務もありません。の現況確認調査まで、現状のステータスを維持します』

「よろしくお願いします」

受話器を置いた。 カチャリ、という静かな音が、私の胸の奥にひとつのさな杭を打ち込んだような覚をもたらした。 背が、汗でびっしょりと濡れていた。 だが、界の霞は完全にれていた。

「……よく言った」

父が、ぬるくなった焙じ茶をすすりながら言った。

「あいつらの狙いが、分かったか」

「……陽菜の枠を、志織の息子の蓮斗に譲ること……じゃないの?」

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私が尋ねると、父は首を横に振った。 湯呑みを置き、座卓のに両肘をつく。

「それだけじゃねえ。それだけなら、わざわざおを夜に叩きし、当の座まで空にする必はねえはずだ。もっと切羽詰まった、と制度の裏がある」

父は、壁に掛けられた古いジャンパーの内ポケットから、枚の折り畳まれた用を取りした。 それは、県営団の「入居許証」の古い複写コピーだった。

「おたちがんどる、あの団。名義は誰になっとる」

「え……康平さんでしょ? 康平さんが、結婚したに申し込んで……」

「違う」

父が吐き捨てるように言った。

「あの部は、もともと俺の古い同僚がんどった枠だ。結婚する、康平の収じゃ審査の点数がりんかった。取り万ちょっとの営業マンじゃ、保証てられん。だから、俺が連帯保証になり、公社の特定優遇枠を使って入居させたんだ。契約の控えは、ずっと俺が持っとる」

私は目を見いた。そんな話は、康平から度も聞かされたことがなかった。

「志織という妹、婚して当をもらっとると言ったな」

「うん……児童扶養当をもらってるって、自分で言ってた。ひとり親の満額で、万数千円……」

「それだ」

父の目が、鋭く細められた。

「児童扶養当の受資格には、厳格な同居件がある。実質な内縁関係や、計を共にする親族の収入によっては、支止されるか、幅に減額される。

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志織のやつ、の男と完全にが切れとらんか、あるいは、どこか別の男から定期を受け取っとるはずだ」

「どうして……?」

「先、団の自治会から俺のところに話があった」

父は淡々と事実を語り始めた。

「役所の福祉課のが、号棟の周辺で聞き込みをしとったそうだ。志織宛ての郵便物が、別の所にも届いとる形跡がある。偽装婚か、当の正受の疑いで、内偵が入っとる。もし正受が確定すりゃ、過に遡って百万円以の返還命令がる。刑事告訴されれば、詐欺罪だ」

の毛穴が収縮するような衝撃だった。

「志織は、逃げを失っとるんだ。そして康平は、その妹の借の連帯保証になっとるか、あるいは、自分のカードローンの枠を使って妹にを貢いどる。あいつらの借の総額は、万どころじゃねえ。数百万円規模に膨らんどるはずだ」

パズルのピースが、恐ろしい音をてて噛みっていく。

「志織がき残るはひとつしかない。あの団に、正式な『同居者』として民票を移し、さらに、世帯の形骸化を偽装することだ。おという正規の妻を『精神疾患による育児放棄・失踪』として戸籍と民票から追いす」

父の言葉が、酷な刃となって私の胸を抉る。

「おがいなくなれば、康平は『妻に逃げられ、乳み子を抱えて破綻寸のひとり親』になれる。

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