みかん小説
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"名前を消された入園届" 第8話

そして、マイナンバーカード。

「……の夜、康平さんが私の引きしを漁ってた」

私の声が、灯油ストーブの燃焼音にかき消されそうになる。

「私の実印と、陽菜の保険証を探してた。会社の類で必だからって……。嘘だった。あの、もう全部いてたんだ」

父が、く、い声で私の名を呼んだ。 湯呑みを置き、座卓越しに私をまっすぐに見据えていた。 その瞳には、かつて私を鳴りつけたの激しさはなく、い夜ののような、徹な静寂が宿っていた。

「通帳をせ」

「え……?」

「おが陽菜のために貯めとった、子供当の座だ。キャッシュカードはあるか」

臓が、トクンと嫌なね方をした。 子供当。 陽菜がまれてから、国から支される千円の当。 それに、産祝いや、私のパート代から毎千円ずつ捻して、度もをつけずに貯めていた座だった。 将来、陽菜が学へのために、埼玉りそなの専用座を作って、帳と緒に厳に管理していたはずだった。

「カードは……財布に入ってる。でも、通帳は……」

「スマホで残が見られるか」

「……アプリが入ってる。連携してあるから」

指先が震え、スマートフォンのパスコードを度打ち違えた。 画面のに表示されたバッテリー残量は、パーセントを切っていた。父が茶箪笥の引きしから探してきてくれた、古い被覆の剥けかけた充コードを端末の底に突き刺す。

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埼玉りそなのアプリのアイコンをタップした。 暗い画面の真んで、い円がぐるぐるとローディングを繰り返す。 そのわずか数秒のが、永のようにじられた。

ピコン、と控えめな子音が鳴り、座サマリーの画面が表示された。

私の呼吸が、喉の奥で完全に止まった。

『普通預:342円』

「……え?」

声にならなかった。 掠れた呼気だけが、唇の隙から漏れた。

画面を激しく連打した。更ボタンを何度も押す。 数字は変わらない。 342円。 昨まで、そこには確かに『814,250円』という数字が刻まれていたはずだった。

陽菜がまれてから、私が自分の着も買わず、化粧すら百円ショップのもので済ませて、円単位で積みててきた、陽菜のための万円。

画面を震える指でスクロールし、入細のタブをいた。

の取引履歴。 付は、昨、午分。

額:814,000円。 取引内容:WEBフリカエ/カードローンヘンサイ 振込先名義:ネット専業消費者融(モビット)

「あ……あぁ……」

の奥で、何かがプツンと音をてて千切れた。 昨の夜。 私が陽菜を寝かしつけ、暗い寝で横になっていたあの。 リビングから微かに漏れ聞こえていた、康平の押し殺した笑い声と、スマートフォンのタップ音。

『ちょっとコンビニってくる』

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そう言って部った康平の背。 彼は、私のキャッシュカードの暗証番号をっていた。 婚の頃、活費の引きしのために教えっていた、陽菜の誕を組みわせた易な桁の数字。 それを使って、昨夜の夜、ネットバンキングから全額を消費者融の返済座へと流し込んでいたのだ。

「……全部、取られた」

界が急速に狭まっていく。 血の気が引き、座っている畳がぐらぐらと傾いていくような覚に襲われた。 座卓の縁を、両で爪がくなるほどく握りしめた。

「陽菜の……陽菜のおだったのに……! あの子がきくなったのために、私が……私が度も使わずに取っておいたおなのに……!!」

声が喉の奥で破裂し、涙がポロポロと畳のにこぼれ落ちた。 悔しさと、りと、何よりも自分自の愚かさに対する激しい嫌悪が、濁流となって胸を突きげてくる。

信じていた。 どんなに頼りなくても、どんなに甲斐性がなくても、康平は陽菜の父親なのだと。 いつか子供の成を見れば、父親としての自覚を持ってくれるはずだと。 そうやって現実から目を背け、さな違を握りつぶし続けた結果が、この342円だった。

私が、陽菜の未来を殺したのだ。 私の甘さが、私のさが、この子のおを、居所を、すべてあのハイエナのような兄妹に差ししてしまったのだ。

、泣くな」

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