"名前を消された入園届" 第6話
からの、自送信メールだった。
暗ので、青い液晶のが私の網膜を焼いた。 そこに並んでいた文字列を認識した瞬、私の体から、すべての体温が急速に奪われていった。
『【さいたま】保育施設等利用辞退届(受付番号:4092)の事審査を受理いたしました。』
メールの本文が、スクロールする指ので、酷に展されていく。
『申請者:横瀬 様 対象児童:横瀬 陽菜 様
本1715分、窓代理(配偶者:横瀬 康平 様)よりご提いただきました「保育施設利用辞退届」および「庭内状況申告(主たる養育者の精神疾患等による養育困難申)」に基づき、事受付処理を完いたしました。
なお、本内定枠(令○度4入園分)を辞退された、当度内における同順位での再申込みは原則となります。 詳細につきましては、曜午9以、各区役所支援課の窓にて――』
画面が滲んで、文字が歪んだ。 喉の奥から、ヒッ、と引きつった空気の音が漏れた。
辞退届。 私が、血の滲むようないで勝ち取った、陽菜の保育園の内定枠。 それを、康平が。 私がまだあの団の部にいた夕方5過ぎ、すでに役所の窓へき、「妻の精神疾患による養育困難」という真っ赤な嘘の申を添えて、勝に破棄していたのだ。
そして、その空いた枠に。 あのお昼寝布団に名を殴りきされていた、志織の息子を。
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すべてが、最初から仕組まれていた。 私を狂に仕てげ、から放りし、子供の未来を奪い、自分たちの都のいい代わりを滑り込ませる。
そのための、今夜だったのだ。
「……お父さん」
私の声は、もはやの声ではなかった。 歯の根がわず、カタカタと激しく鳴っていた。
画面を父の目のに突きつけた。 父は、踏切ががり、ギアを入れるを瞬だけ止めた。 青いに照らされたメールの文面を、父の細い目がじっと見つめた。
父の顎の筋肉が、ギリ、と音をてて直した。 それだけだった。 鳴ることも、取り乱すこともしなかった。 ただ、静かにを向き、アクセルをく踏み込んだ。
エンジンの唸り声が、夜のバイパスに響き渡った。 私はスマートフォンの画面を握りしめたまま、助席のシートにく背を沈めた。
窓のを、見慣れた埼玉の無質なロードサイドのかりが、猛烈なスピードでろへと流れていく。 曜の朝9まで、あと40らず。
私はまだ、彼らがこの団で何を企み、私から何を奪おうとしていたのか、その底れぬ悪の全貌を、何ひとつらなかった。
トタン根を叩く、鈍いの音が夜の底に響いていた。
武線の線沿い。築になる造モルタルアパートの階、畳の。 の通過にわせて、部の隅に置かれた茶箪笥のガラス戸が、カタカタと微かに震えている。
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部のには、古い油ストーブの、し完全燃焼を起こした灯油の匂いがち込めていた。 青い炎が、ちろちろとガラス筒の奥で揺れている。板に乗せられた季の入ったアルミのやかんが、細くい湯気を井の煤けた目に向けて吐きし続けていた。
「……め」
父が、褪せた座卓のに、欠けのある湯呑みを置いた。 ちる茶の湯気に、焙じ茶のばしさと、のカルキ臭が混ざりっている。
陽菜は、父が押し入れの奥から引っ張りしてくれた、に焼けたせんべい布団ので、ようやくい眠りに落ちていた。 え切っていたさなは、灯油ストーブの気でようやく赤みを取り戻し、折、いしたようにビクッと肩を震わせながらも、定の寝息を刻んでいる。 私は、松のセールで買った毛玉だらけのカーディガンを脱ぎ、陽菜のさな胸元にそっと掛け直した。
私の指先は、まだ震えていた。 団の階の廊に放りされたの、たい鉄扉の閉まる音。 ドアチェーンが噛みう、あの乾いた属音が、の奥にこびりついてれない。
「……お父さん」
私は、湯呑みを両で包み込んだ。陶器のさが、かじかんだのひらに痛いほど染み込んでくる。
「私、ずっと……気づかないふりをしてた」
父は何も答えず、あぐらをかいた膝のに太い腕を乗せ、ただ黙ってストーブの青い炎を見つめていた。