"「他人の姉に使う金はない」夫と800万円の新居" 第26話
浩司さんも自分の借返済と々の活でいっぱいで、度もお見いにはっていないそうです。親族の恵子さんも完全に縁を切ったと聞いています」
おが全ての絆だった親子の、あまりにもれな末だった。
私は「そうですか」とだけく答えた。
先にい謝の言葉を伝え、話を切る。
窓ガラスに映る私の顔は、とても穏やかだった。
復讐を果たしたという黒いびはない。
ただ、汚れたものが自分のから完全に消えったという、静かな堵だけがあった。
同じ頃、町のはずれにある賃3万円の古い造アパート。
その暗い畳半の部で、夫の浩司は1、シミのついた畳のに座り込んでいた。
部にはエアコンもなく、の蒸し暑い空気が淀んでいる。
壁はく、隣の部のテレビの音が筒抜けになるような所だ。
かつてんでいた、私が毎掃除をしてを飾っていた清潔なとは、とほどの差があった。
窓をけても聞こえてくるのは、の騒音だけだ。
夫の目のにあるのは、コンビニで買った半額シールの貼られた番い豚肉の弁当だった。
それを見るたびに、数の夜、自分が妻に鳴り散らした記憶が蘇る。
『なんだこの飯は?豚肉と野菜の炒め物だけか?俺は疲れて帰ってきているんだぞ』
あの、妻がどんな気持ちでその夕を作っていたのか。
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夫は今になってようやくそのを理解した。
あの清潔で涼しいリビング。
毎当たりのようにてきた温かいご飯とたいお茶。
アイロンがかけられた真っなワイシャツ。
それらは全て、妻が自分のために無償で捧げてくれていただった。
それを自分は毛嫌いし、見し、若い女にうつつを抜かし、自らので々に壊してしまったのだ。
夫は震えるで割り箸を割った。
しかし、え切った油の固まった肉をもみ込むことはできなかった。
箸を持ったまま、夫の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
声を荒らげて泣く気力すら、もはや残っていない。
ただ自分の愚かさを激しく呪い、暗い部の隅で音もなく刻みに震え続けることしかできなかった。
スマートフォンは解約され、誰も彼を慰める者はおらず、誰の連絡も来ることはない。
それが、彼が自分で選んだの結末だった。
方、義母のかず子は、町からくれた奥の古い介護施設のベッドに横たわっていた。
部の内は、い消毒液と古い尿の匂いが染みついている。
窓には全のための鉄格子がはまり、自由に入りすることも許されないような所だ。
隣のベッドからは、認症の齢者がうわごとを叫ぶ声が聞こえていた。
義母はその騒音ので、ただ剥がれかけた井の壁をじっと見つめていた。
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遺症で半が完全に麻痺し、言葉を話すこともできない。
事も気ない流を、忙しい職員に械にに運ばれるだけだ。
私が作っていた汁の効いた煮物や季節の野菜を添えた温かいご飯。
文句を言いながらも、義母はそれを毎残さずべていた。
その当たりだった幸せに、全てを失った今になってようやく気づいたのだ。
面会はとっくに過ぎているが、今も息子の浩司は姿を見せない。
妹の恵子も度も顔をしていない。
かつて所のたちに『うちの息子はきな親孝をしてくれるのよ』と自していた自分の姿が、い昔のようにじられる。
する息子は無残にも母親を見捨てた。
自だった級な指輪もバッグも、施設の入所費用を払うために全て売り払われた。
残されたのは、うようにかない体と、孤独で絶望ないだけだ。
義母の脳裏に、あの病院の病で突きつけられた1枚の古い領収が浮かんだ。
自分の命を救ってくれた『田直子』という名。
自分が汚いと罵倒した女が、自分をから助けてくれていたというい事実。
もしあの、直子という恩に謝し、嫁である由美に優しく接していれば。
今頃は優しい嫁が毎見いに来て、温かいお茶をませ、穏やかな言葉をかけてくれていたかもしれない。