"「他人の姉に使う金はない」夫と800万円の新居" 第23話
私はで泣き喚く夫を、静かに見ろしていた。
しの同もれみも湧かない。
『自業自得』。
その4文字だけが私ののにあった。
姉を見捨てて私を裏切り、自分たちだけが幸せになろうとした結果がこれだ。
夫は、自分の勝な嘘が全て自分自にを剥いて返ってきたことに、ようやく気づいたのだろう。
救急処置の扉がき、識のない義母がストレッチャーで運ばれてきた。
呼吸器に繋がれ、顔面は真っだ。
「これより救急で病院へ転院します。ご族はお急ぎください」
医師や護師たちが慌ただしく義母をエレベーターの方へ運んでいく。
夫はうようにしてちがり、フラフラとそのを追いかけようとした。
私はその夫の背に向かって、静かに声をかけた。
「浩司さん」
私の声は、騒がしい廊のでもはっきりと夫のに届いた。
夫はビクッとち止まり、恐る恐る私を振り返った。
その目はもはやのそれではなく、ただ怯えるだけのさな物のようだった。
私はバッグのから、あらかじめ用しておいたあるものを取りした。
それは、夫の息の根を完全に止める最の撃だった。
夫は力なくにいつくばり、私の元で泣き声をあげていた。
に捨てられ、おもなくなり、母親を転院させることしかできない惨めな男。
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私はその背を見ろしながら、バッグのからあらかじめ用しておいた類を取りした。
それは数に弁護士の事務所で作成してもらった緑の用と、数枚の類だ。
「浩司さん」
私の静かな声に、夫はビクッと肩を震わせて顔をげた。
私はその類の束を、夫の目ののにそっと置いた。
「あなたが望んでいた婚届です」
私は無表のまま告げた。
「お義母さんも今、ここで私に判子を押せとおっしゃっていましたよね」
私は続けた。
「ご希望通り、私の署名と捺印は済ませておきました」
夫は震える両で、その類を拾いげた。
しかし、そこに添えられたもう1枚の類を見た瞬、夫の顔が激しく引きつった。
それは弁護士が作成した慰謝料及び当利得返還請求だった。
貞為に対する慰謝料、300万円。
そして夫が勝に引きしてとのマンションのために使い込もうとした共財産。
800万円の全額返還。
計1100万円の括請求だ。
「お、お……こんな、今の俺に払えるわけがないだろう!」
夫は掠れた声で叫んだ。
「払えなくても、法な義務です」
私は徹に言い渡した。
「すでにお勤め先の会社にも内容証が届いています」
私は夫を見据えた。
「あなたの料や退職は今差し押さえの対象になりますから」
私の言葉に、夫は力なく首を振った。
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には見捨てられ、会社には倫と横領の事実がれ渡り、の座は凍結されている。
夫にはもう、逃げは1つも残されていなかった。
「それに浩司さん。最に1つだけ切な事実を教えてあげます」
私は絶望の底にいる夫の目をまっすぐに見据えた。
「お義母さんの術に必な300万円。本当なら私たちには、余裕で払えるおがあったんですよ」
夫の肩がきくねた。
私は残酷な事実を告げる。
「私たちが20、しずつ貯めてきた800万円。あのまま座に残っていれば、お義母さんはこの派な病院で、最の設備ですぐに術を受けられたんです」
私はややかに言葉を続けた。
「でも、あなたはそれを全額引きし、に貢いで使い込んだ」
夫の目が限界まで見かれた。
をパクパクとかすが、喉が干からびたように声がない。
私はゆっくりと、とどめの言をにした。
「お義母さんを設備のっていない病院へ追いやったのは、私ではありません」
私は夫を指差した。
「でもない浩司さん、あなた自の欲と嘘のせいですよ」
その静かな言は、どんな鳴り声よりもく夫の臓をえぐり取った。
夫の顔から、完全に血の気が引いた。
「あ、ああ……俺が、俺のせいで母さんが……」
夫は両で自分のを激しく抱え込み、に崩れ落ちた。
自分の勝なが、自分の母親の命を奪おうとしている。
その取り返しのつかない事実に気づき、夫は獣のようなうめき声をあげて泣き崩れた。