"「他人の姉に使う金はない」夫と800万円の新居" 第21話
夫はガクガクと膝を震わせた。
「そ、そんな……」
力なくそのにへたり込む。
に貢ぎ、自分の母親の術費すら用できない男。
それが今の夫の本当の姿だった。
叔母の恵子さんも事のさに気づき、夫をく責めてた。
「ちょっと浩司、あんたおないの?」
恵子さんは鳴った。
「さっきマンションがどうとか、おはほどあるとか言ってたじゃない!」
恵子さんは夫を睨みつけた。
「男のくせに、母親の命よりとの活を優先したっていうの!」
夫は々しく言い返した。
「違うんだ!俺だってこんなはずじゃ……」
夫は泣きそうな声で言った。
「座が止められてるんだ。俺のは、今は1円もかせないんだよ」
恵子さんは酷に言い放った。
「けない。かず子お姉ちゃんがあんたを甘やかして育てた結果がこれよ」
彼女は吐き捨てるように言った。
「自分の母親を見殺しにする気!」
恵子さんの容赦ない言葉の刃が、夫のにく突き刺さる。
夫は両で顔を覆い、子供のように泣きじゃくった。
そして、ゆっくりと顔をげ、私の方を見た。
その目はに溺れる犬のように、惨めでれな目をしていた。
「由美、頼む……助けてくれ」
夫はをうようにして私にづいた。
私の元にすがりつく。
「おの貯でもいい。姉貴のを担保にしてもいい。いや、姉貴の治療費をこっちに回してくれ」
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夫は必に懇願した。
「頼むから、300万してくれ。母さんがんでしまう」
つい先ほどまで、私をゴミのように見し、から追いそうとしていた男が。
私の姉をだとで笑い、さっさとねと罵っていた親子が。
今、命を救うためにそののおにすがって泣き叫んでいるのだ。
私は元で座をする夫を、たい氷のような目で見ろした。
自分のことしか考えず、おでの命を秤にかけ、私と姉の尊厳を踏みにじった男。
彼から流れる涙には、悔のなど微もない。
あるのはただ、自分のい通りにならないことへの苛ちと、見栄を張れなくなった惨めさだけだ。
私はそんな夫ののに言葉を落とした。
私のからた静かな言が、夫を完全な絶望へと突き落としたのだ。
にいつくばり、私の元にすがりつく夫。
その震える背を見ろしながら、私はたく言い放った。
「お断りします」
私は無表のまま告げた。
「私のおは、もう1円もしません」
私の静かな拒絶に、夫の浩司は弾かれたように顔をげた。
その顔は涙とでぐしゃぐしゃに汚れ、ひどく見苦しいものだった。
「なんでだよ!300万くらい、おならせるだろう!」
夫は私のスカートの裾をく引っ張り、子供のように泣き喚いた。
「母さんがんでもいいっていうのか!鬼、悪魔!」
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私は無表のまま、夫のを無造作に振り払った。
「ええ、構いませんよ」
私は徹に言い放った。
「どうなろうと、私にはもう関係ありませんから」
夫は信じられないというように叫んだ。
「関係ないって……俺の親だぞ!」
私はややかに答えた。
「私にとっても、姉は親代わりでした」
私は夫を見据えた。
「それを『に使うはない』と笑って見捨てたのは、あなたたち親子です」
夫は言葉に詰まり、をパクパクとかした。
私はさらに言葉を続けた。
「それに、私のおは全て弁護士を通して管理しています」
私は酷に事実を告げる。
「あなたののために使い込まれた800万円を取り戻すための裁判の準備費用です。あなたたちのようなに渡すおは1円も残っていません」
私の言葉を聞いて、横で見ていた叔母の恵子さんがハッと息を呑んだ。
つい1までは病で緒になって私を嘲笑っていた恵子さん。
しかし夫の倫、そして夫婦の貯800万円の横領という事実をり、その顔が気に変わった。
夫は藁にもすがるいで、今度は恵子さんに泣きついた。
「え、おばさん!頼む、300万貸してくれ!母さんがんでしまう!」
夫は血った目で恵子さんの腕を掴んだ。
しかし、恵子さんは顔を引きつらせた。
夫のを汚いものでも払うように激しく振りほどいた。
「冗談じゃないわよ!私にそんながあるわけないでしょう!」
私に向けられていた嫌悪の線が、今は完全に夫へと向けられている。